制限時間終了後も、ランナーに寄り添い共にゴールする海部高校生=海陽町の蛇王運動公園

雨が降る中、給水などに携わるボランティア。多くの力が大会を支えている=海陽町

 「第12回究極の清流海部川風流(ふる)マラソン」が16日、海陽町で開かれた。国内最大級のランニングサイト「RUNNET」の口コミ評価では、大会ランキングで毎年全国1位が続く。おもてなしやコース沿いの自然、適度な大会規模などが人気の要因のようだ。悪天候にも見舞われた今年の大会も、制限時間切れ後に、心温まるシーンに出合った。

 海部川風流マラソンの制限時間は6時間。午前9時にスタートするため、午後3時までにゴールしなければならない。制限時間が近づくと、ゴール前では「残り5分になりました」「残り1分になりました」とアナウンスされ、最後の力を振り絞ってゴールに突っ込む。

 ちょぅど6時間になると、大会は終了し、ゴール付近では関係者らが「お疲れ様でした」と声を掛け合い、引き上げる。そんな中、最後までゴールに向かうランナーに付き添っているのが、ボランティアで参加している地元・海部高校の高校生たちだ。制限時間が過ぎてもゴールに向かって走り続けるランナーを目にすると、「ラストでーす」「頑張ってください」と声を掛け、迎えにいくように近づいて伴走する。

 1人、2人とやってくる。高校生はゴールすれば、Uターンして次のランナーに駆け寄る。中には一緒に手をつなぎ、バンザイしてゴールラインを超える。雨が降りしきり、ゴール付近はどろどろ。高校生も雨に濡れ、足元は跳ねた泥でいっぱいだ。

 ゴールに向かうランナーがいる限り高校生たちは帰らない。最後のランナーがゴールしたのは、午後3時10分過ぎ。香川県から初参加した69歳の男性だ。男性は「人気が高い大会なので一度来たいと思っていた」と言う。制限時間内にはゴールできなかったが「最後までゴールできて良かった。しかも高校生たちと手をつないでゴールできるなんて思わなかったので、いい記念になりました」と話した。記録は残らなかったが、記憶には残り続けることだろう。

 「RUNNET」の口コミ評価は、大会に参加したランナーが会場までのアクセスやコース設定などの項目を評価する。大会全体の平均点(みんなの総合評価)と、全国の大会ランキングが年ごとに公表されている。海部川風流マラソンは第3回以降、第5回の2位を除いてトップが続く。2016年以降のランキングをみても、上位2、3位は毎年変わっている。海陽町は各方面からのアクセスが悪い上、各地でマラソン大会が増える中、1位を続けているのは特筆すべきと言える。

 参加者からは、海部川沿いを走る自然の素晴らしさや、子どもから高齢者までが参加したおもてなしへの評価が高い。昨年の大会終了後に県外の参加者に取材した。札幌市から6年連続出場している50代男性は「いろんな大会に出ているが、ホスピタリティ(おもてなし)が抜群。大会規模もちょうど良く、走りやすいし、トイレや駐車場も混まない。最初から最後までストレスがかからない。遠くても、わざわざ来たいと思う」と話した。

 初めて走った宇都宮市の30代男性は「素晴らしい大会と聞いていたので、一度参加してみたかった。疲れた時に応援されて、力になった。思わずペースが速くなりました」、東京都品川区の20代男性は「応援が途切れず景色も良く、とても楽しかった」、熊本県玉名市の40代男性は「大規模な大会とは違う雰囲気がいい。川もきれいで、期待通りだった」と述べた。

 人口約9200人の町が、マラソン大会を継続するのは容易ではない。予算確保も厳しく、2年連続してクラウドファンディングで資金を募った。過疎化や高齢化によって運営を支えるボランティアの確保も難しくなっているという。何とか続けられような支援態勢を模索してほしい。

 今年も39都道府県から2千人を超えるエントリーがあった。悪天候のため、出走者数、完走率とも昨年の大会を下回ったが、懸命の走りと応援が繰り広げられた。来年はぜひ好天の下で、素晴らしい自然と、おもてなしを満喫してほしいと思う。(卓)