「国民的」と評されるほどの歌手の曲なら、誰しもひいきの一つ二つがあるはず。勝手な価値観で言わせてもらうと、バブル世代にとって彼の代表曲は「世界に一つだけの花」ではなく「どんなときも。」である。

 超の付く好景気に浮かれつつ、どこか退廃的な空気も漂う。そんなもやもやとした世相を、軽快な電子ピアノとメッセージで打ち破らんとした。<どんなときも/僕が僕らしくあるために/「好きなものは好き!」と/言えるきもち抱きしめてたい>

 50歳前後の「アラフィフ」の教祖が、どうしたことだろう。彼、槙原敬之容疑者が覚醒剤所持の疑いで逮捕された。20年余り前に続いて2度目とは。今後は絶対に起こさないという直筆文書を、あの時公開したというのに 覚醒剤は恐ろしい。使用をやめても幻覚や妄想などの激しい精神症状が起きる。断ち切るのは容易ではなく、一人でいる時間、薬の誘惑が生じる時間をなくすのが治療の鉄則とされる。

 だから、家族など周囲の粘り強いサポートが欠かせない。槙原容疑者には、けんかをしてでも支えてくれる理解者が不幸にもいなかったか。彼の「僕らしく」は薬物におぼれる姿ではなかろうに。

 徳島でも民間施設などで依存症と闘っている人がいる。槙原容疑者の再犯が回復への気力をそぐことにならないか、案じてしまう。