疑惑の本丸に迫らないまま、一方の当事者だけが裁かれた。

 国や大阪府、市から計約1億7千万円の補助金をだまし取ったとして、詐欺罪などに問われた学校法人「森友学園」の前理事長籠池泰典被告に懲役5年、妻諄子被告に懲役3年、執行猶予5年の判決を、大阪地裁が言い渡した。

 森友学園を巡っては、国有地が8億円余りも値引きされて売却されたことや、財務省が決裁文書を改ざんした問題が発覚した。だが、いずれも不問に付され、背景に何があったのかという核心部分は今も分からないままだ。

 学園が開校を目指した小学校の名誉校長には、安倍晋三首相の昭恵夫人が一時就任しており、夫人の関与や官僚が政権に忖度したとの疑念も広がった。

 そうした問題の真相究明が残っていることを、改めて確認したい。

 判決によると、両被告は2011~17年、大阪府豊中市の国有地で開校予定だった小学校の建設費を水増しし、国の補助金約5644万円を詐取。泰典被告は教員数などを偽り、府市の補助金計約1億2千万円をだまし取った。

 弁護側は、小学校の設計業者が水増しを主導したなどと主張したが退けられた。

 両被告は「官邸の意向と忖度で財務省が動いた値引き疑惑から、国民の目をそらせるための逮捕だ」と大阪地検特捜部の捜査を批判し、約300日に及んだ長期勾留も「口封じだ」と訴えた。

 税金である補助金の詐取は許されない犯罪である。一方で、捜査手法に問題はなかったのか、検証が必要だろう。

 一連の疑惑に対する特捜部の対応は、ふに落ちないことが多すぎる。

 国有地の巨額値引きなどに関係し、背任や虚偽公文書作成容疑で告発された官僚らを不起訴処分としたことだ。

 国有地売却では、財務省などの職員から事情を聴いたが、値引きの根拠となったごみ撤去費の積算額を不適正とするのは困難と結論付けた。

 文書の改ざんでも、佐川宣寿元国税庁長官らの立件を見送った。根幹部分は変わっておらず、虚偽と認めるのは難しいとの理由だったが、改ざん文書は14件に上り、昭恵夫人の名前や「特例的な内容」といった文言を削除していた。問題の本質を隠すためだったとの疑いが拭えない。

 一般市民らによる大阪第1検察審査会が「不起訴不当」の議決をしたものの、特捜部が再び不起訴とし、法廷で解明する機会は失われた。

 しかし、森友側との交渉記録を「廃棄した」と佐川氏らが国会で繰り返し答弁した姿は、その後の「加計学園」問題や、現在の「桜を見る会」を巡る政権の対応と重なる。

 国有地は国民の共有財産であり、公文書は国民共有の知的資源だ。民主主義の根幹をないがしろにした行為を、うやむやで終わらせるわけにはいかない。