「注文をまちがえる料理店」と題したイベントがある。3年前、東京で初めて開催され、各地に広がっている。隣県、松山市でも先月、1日限定で開かれた。

 「注文の多い料理店」と書こうとしてしくじった。そう考えた人、それは早計です。この店、本当に間違える。ハンバーグを頼んだのにギョーザが出てきて大笑い。お客さん、怒るどころか、ほっこり温かい気持ちになれるとか。

 店員は認知症の人たち。無論、事故のないよう福祉の専門家がサポートしている。注文や配膳が違っても、おおらかに。それがルールだ。取り組みに賛同して、認知症の人を常時雇う店も出てきたそうである

 社会に居場所があれば、認知症になっても、まだできることはある。周囲の理解も進み、誤解や偏見も減っていくはず。「忘れちゃったけど、間違えちゃったけど、ま、いいか」。そうした寛容ささえあったなら。

 「こうじゃなきゃいけない」といった鋳型にはまった考え方が「拘束」や「閉じ込め」を招くのではないか。店を発案した元NHKディレクターの小国士朗さんは、著書『注文をまちがえる料理店』(あさ出版)で指摘する。

 <どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません>。賢治の童話の一節には大きな落とし穴があるけれど、こちらの料理店なら遠慮なく訪ねてみたい。