3ボール、ノーストライク。南海の名投手、皆川睦雄さんは、打ってこないだろうと、ど真ん中に直球を投げ込んだ。判定はボール。皆川さんが詰め寄ると、二出川延明球審は言い放った。「いまの球は気持ちが入っとらん」。

それは皆川さんへの戒めだった。怒るどころか、納得した皆川さんは、一球たりとも気を抜かないよう心掛けたそうだ。二出川さんほど、エピソードに彩られた審判はいまい。しかも、どれもウイットにあふれている。

「おれがルールブックだ」もその一つ。判定に納得のいかない西鉄の三原脩監督に「ルールブックを見せろ」と迫られる。いつもは持っているのだが、この日に限って家に忘れてきた。そこで出たのがこの言葉だった。

安倍首相からも「おれがルールブックだ」との声が聞こえてきそうだ。しかし、こちらはウイットのかけらもない。東京高検検事長の定年延長問題である。

森法相は当初、国家公務員法に延長規定があるので、それを適用したと説明していた。ところが、過去の国会で政府が「検察官には適用されない」との見解を示していたことが判明し、ルール違反が明らかに。

すると首相は「今般、適用されると解釈することにした」。すっぽ抜けの球をストライクとなるようにルールの解釈を変えるという。二出川さんも泉下であきれていよう。