職場に届いた一冊『海を渡った故郷の味(新装版)』(トゥーヴァージンズ社刊)は、国際色豊かな料理本である。15カ国・地域の家庭料理を中心に45品が並ぶ。

 例えばカメルーンのシチューは、ピーナッツの粉末をどっさり加えるのが定番。どの献立も日本になじみは薄いけれど、材料は調達しやすく手軽に調理できそうだ。

 各レシピを提供したのは、難民として日本に住む外国人たちである。家庭料理の味や匂いは、懐かしい古里の記憶を呼び覚ます。迫害を逃れてやってきた彼らの郷愁は、ひときわ強かろう。

 「できるならば今すぐにでも戻りたい。国にいる母や兄弟と食卓を囲みたい」。中東から来て20年になる男性の一言が切ない。彼は、ニラとスパイスがたっぷりの卵焼きを紹介した。

 政府が一昨年に難民と認定したのは42人で、申請の0・3%にとどまる。カナダは56%、ドイツ26%など、先進国の中で日本は格段に低い。「日本で難民が暮らしていることを、もっと知って」と本を編著した認定NPO法人の難民支援協会。

 難民支援に力を尽くし、昨年亡くなった緒方貞子さんは、国連で行った最後のスピーチを「誰よりも、難民に尊厳を」と締めくくった。不幸にも難民となった人が、せめて懐かしい母国の料理を安心して作れるように。日本が果たせる役割は、まだまだ多い。