登り窯にまきを入れる矢野款一さん(右)ら=鳴門市大麻町の矢野陶苑

登り窯にまきを入れる矢野款一さん(右)ら=鳴門市大麻町の矢野陶苑

 鳴門市大麻町の大谷焼窯元・矢野陶苑が18日、3年2カ月ぶりに山の斜面を利用して造られた伝統の「登り窯」に火入れした。20日夕まで、火を絶やさないようにまきを入れる作業を続ける。

 午前8時半から矢野款一さん(74)の長男祐志さん(51)ら3人が、水がめや花瓶など約1500点を入れた窯にまきで点火。温度が最高1240度になるよう夜を徹して火力を調整する。作品が自然に冷める6月30日ごろに窯出しする。

 登り窯は約130年前に造られ、全長は約25メートル。電気やガスの窯を使った作品とは違い、火の当たり具合で味のある焦げ目ができたり、灰の掛かり具合によって独特の色が出たりするのが特徴。ただ、登り窯での制作には労力が必要なため、矢野陶苑は中断していた。

 款一さんは今年3月、第9回とくしま芸術文化賞(県文化振興財団)を受賞。登り窯の火入れについて「技術を継承したり、若者に関心を持ってもらったりするためには続ける責任があると思った」と理由を述べ、「登り窯で作ることは陶芸家の神髄で、本当におもしろい」と充実した表情を浮かべた。

 制作した食器や花器の一部は、7月9~26日まで美波町西河内の「ギャラリー花筏」で開かれる個展で販売される。