軽トラックで生鮮食品や日用品を販売する移動スーパーを全国に展開する「とくし丸」(徳島市)が、大手食品メーカーなどから商品の市場調査を請け負う事業を拡大させている。買い物に行くのが困難な高齢者を主な客層にしていることで高齢者に特化した調査を行いやすい上に、調査のための試供品配布が後の販売につながるとメーカー側に好評で、請け負い数を着実に伸ばしている。
とくし丸は2013年5月に、高齢者への移動販売に付随した新ビジネスとして市場調査の請け負いを始めた。大塚製薬のカロリーメイトを皮切りに、サンスターの歯磨き粉やエースコックのカップ麺など、これまでに手掛けた調査は16件に上る。
市場調査はとくし丸の販売員が通常の販売を行いながら、企業から調査を請け負った商品の試供品を配り、後日、感想を聞く。企業の要望があればアンケートを取る。
企業側は、調査結果を高齢者のニーズ把握や商品改良に役立てられるほか、試供品を配ることで高齢者に商品をPRでき、後の販売チャンスが広がる。とくし丸は試供品の配布数に応じて企業から料金を取っている。
16年3月実施の森永乳業の調査では、県内外のとくし丸89台がヨーグルトを1万個配り、ヨーグルトを食べる頻度や味の評価などについてアンケートを取った。
とくし丸によると、調査を通じて高齢者のヨーグルトに対するニーズの高さが分かったほか、試供品配布をきっかけに、とくし丸などでのヨーグルトの販売数が1カ月で約2万個増えたという。
森永乳業はこの成果を受け、今月5日から5日間、特定保健用食品の飲料でも調査を委託。県内外のとくし丸150台が4万5千本を配って調査した。
商品の市場調査の手法はインターネット、電話、街頭インタビューが主流で、調査対象はおのずと若い世代が多くなる。食品や日用品の市場で高齢者の存在感が高まる中で、とくし丸による調査が高い評価を得ている。
とくし丸の住友達也社長は「とくし丸は80歳前後のおばあちゃんたちにアクセスできるまれなチャンネルを持っており、メーカーにとって価値ある情報を提供できる」と話している。