那賀町は、町内の認知症の高齢者が行方不明になった際、住民にメールで不明者の情報を送り、情報を寄せてもらう「SOSネットワーク事業」をスタートさせた。行方不明の高齢者を地域ぐるみで捜す体制を整えるのが狙いで、県内の市町村では初めての試み。町は、地域の事業所が加盟している既存の「見守りネットワーク」との2本柱で、行方不明者の早期発見を目指す。
SOSネットに協力できる住民が、町にメールを送るなどして登録する。認知症の高齢者の家族には氏名や住所、顔写真、身体的特徴などを書いた申請書を町に提出してもらう。申請済みの高齢者が行方不明になり、家族が那賀署に捜索願を出した際、町は登録した住民に情報を送る。
住民には、特殊詐欺の注意喚起や認知症サポーター養成講座など福祉関連の情報もメール配信し、日頃から高齢者や認知症への意識を高めてもらう。
2016年2月に運用を始めた「見守りネットワーク」には、今年2月末時点で219事業所が加盟し、高齢者の見守り活動を行っている。行方不明者が出たとき、町が事業所に不明者の情報をメールで送り、手掛かりとなる情報を寄せてもらっている。
ただ、業務用のメールアドレスを持っていない事業所が多かったため、従業員らが見慣れない高齢者を見掛けるなどした場合は一方的に情報を寄せてもらっているのが実情だった。そこで町は、広く住民に協力を呼び掛けようと、SOSネットを導入した。
町保健医療福祉課は「行方不明者の捜索だけでなく、地域の課題解決につながるネットワークを構築したい」としている。
町消防署によると、65歳以上の行方不明者の捜索は、2014と15年にそれぞれ1件発生。16、17年はなかった。
