とくしま創生アワードは本年度、審査や応募者の支援に当たるサポーターとして5人の起業家を新たに迎えた。その一人が、米サンフランシスコ発のチョコレート専門店を日本国内で展開するダンデライオン・チョコレート・ジャパン(東京)の堀淵清治社長(65)=小松島市出身、写真。これまでの歩みや思いを聞いた。(聞き手=湯浅)
城南高、早稲田大を卒業後、渡米。米国の大学院で文化人類学を専攻するも中途退学し、ヒッピー生活を送った。
「ヤートと呼ばれるテントを自分で建てて暮らしていました。振り返ってみれば、精神的にも肉体的にも人生で最も健康だった時期です」
転機は1986年。小学館の出資を受け、日本の漫画を米国で出版するビズコミュニケーションズを設立し、米国版週刊少年ジャンプの発刊や「ポケモン」ブームをけん引した。2009年には、日本のポップカルチャーを紹介するNEW PEOPLE社を立ち上げた。
「現在の事業内容は、サンフランシスコの日本人街にある複合商業施設の経営やイベント企画、日系企業の米国進出支援など多岐にわたります。音楽を中心に、日本のファッションやアート、映画、食などを紹介する『J―POPサミット』は、2日間で3万人を動員する一大イベントに成長しました。米国で日本は、欧米でなくアジアでもない、独特の文化を育んだ国として認識されています。背景には外来のものを受け入れて洗練させる寛容さ、柔軟さがあると思います」
近年は、サンフランシスコ発の文化を日本に紹介する事業も手掛ける。15年に話題となった「ブルーボトルコーヒー」の日本進出を指揮。16年にはカカオ豆の仕入れからチョコレートへの加工までを一貫して行う「ビーントゥバー」の専門店「ダンデライオン・チョコレート」を、ものづくりの街として知られる東京・蔵前にオープンした。
「キーワードはクラフト。食べ物もファッションも大量生産・大量消費の文化が終わり、丁寧に作られたもの、本質的なものを求める消費者が増えました。心ある生産者と消費者がアイデアを出し合ってより良いものづくりをしていく時代になったのです」
ダンデライオン・チョコレートは、伊勢外宮前店や鎌倉店など東京以外での店舗展開を進める。古里徳島での事業展開も常に意識するほか、地域で頑張る若手を応援している。
「今や人がいないということはデメリットではありません。徳島県内に内需がないといっても、経営者の思想やセンスが感じられる店にはそれを理解する人が一定数集まっている。そうやって幾つものブランドがつくられていけば、外の人も自然と徳島に集まってくるはずです」
「新しいことをするときに反発があるのは当たり前ですが、それを支持してくれる人も必ず存在します。信念と勇気を持って力を出し続けていくこと。そうでなけば”革命“は起こりません」。