「レイプされそうになり、悲鳴を上げたので未遂で済んだ」「夜になると男の人が毛布の中に入ってくる」-。全国の女性団体で組織する東日本大震災女性支援ネットワーク(東京)がまとめた「災害・復興時における女性と子どもへの暴力に関する調査報告書」には、避難所で過ごした女性たちの悲痛な体験談が収められている。

 調査は2011年の10月から約1年間、米ミシガン大の吉浜美恵子教授ら有識者の協力を得て行われた。「被害を受けた人」や「被害者から相談を受けた人」から82事例が報告され、震災に関連する暴力の実態をあぶり出している。

 その結果、被害者の9割以上は女性で、「DV以外」の暴力が37件報告された。うち「強姦(ごうかん)・強姦未遂など同意のない性交の強要」が10件、「わいせつ行為・性的嫌がらせ」は19件に上り、深刻な性被害が少なからず起きていたことを示している。ネットワーク世話人の正井(まさい)禮子(れいこ)ウィメンズネットこうべ代表理事は「阪神大震災のときも同じだったが、治安が悪化する中、混乱に乗じた加害が横行していたのではないか」とみる。

 しかし震災後、警察に寄せられる性犯罪の申告が被災3県で目立って増えたわけではない。背景には、被災女性が追いやられた立場や男女の社会的格差の顕在化など、災害時特有の要因が横たわっている。

 調査によると被害の場所は「避難所」が19件で、37件のうち約半数を占める。加害者で一番多かったのが「避難所住人やリーダー」(19件)で、「義理の家族・母親の交際相手」(9件)「災害支援者・ボランティア」(6件)と続く。生活せざるを得なかった避難所で、身近な相手から被害を受けているケースがほとんどだ。

 「まだ遺体が外に残されたままのころ、嫌なら避難所を出て行けと言われ、性行為に応じた」「物資をくれる見返りに、性的関係を強要された」など、行き場がなく生活に困窮する女性につけ込んだ悪質な例もあった。

 被災女性の支援に取り組んだNPO法人参画プランニング・いわて(盛岡市)の田端八重子理事は「沿岸部は保守的な考えが根強く残る。狭いコミュニティーではうわさが一生つきまとうため、被害者が泣き寝入りする場合も多い」と、被災地での被害申告の難しさを指摘する。

 身を寄せた避難所で生活しづらくなるという危機感や「知られたくない」といった被害者の心情。さらに美談や「絆」ばかりが語られる風潮もあり、災害時の性被害は埋もれがちだ。

 しかし海外に目を向けると、大型ハリケーン「カトリーナ」の襲来後に多数の性被害報告を受けた全米性暴力情報センターは調査に乗り出し、国連は対策マニュアルを作った。被災地での性暴力は十分起こり得ると捉えた海外の動きは速い。

 対して、災害大国である日本。そうした視点を持ち、女性を守るための対策に取り組めているだろうか。ただでさえ精神的に追い詰められる災害時、女性が性被害によってさらなる苦痛を強いられることがあってはならない。(2015年9月27日 徳島新聞掲載)=肩書きは当時