戦後最悪の大災害となった東日本大震災で、女性たちは特有の困難に直面していた。女性用物資の不足や男性本位の避難所運営、プライバシーのない避難生活での性被害-。これらは被災下、女性たちがいまだに「社会的弱者」であることを物語る。徳島でも南海トラフ巨大地震の発生が予測されている。「その時」に備え、女性の視点をいかに対策に盛り込むのか。被災地の事例から学ぶ。

 「発生直後に生理になったが、避難所では小さなナプキン一つしかもらえなかった。漏れるのが怖くて横にもなれない。猫を連れた人にペット用トイレシートをもらい、小さく切って敷いていた」

 宮城県で女性支援に取り組むNPO法人・イコールネット仙台には、被災女性の切実な体験談が寄せられている。震災直後、食べ物や水などは次々と届いたが、ナプキンのような女性の必需品は支給まで時間がかかった。

 しばらくは下着も不足し、避難所で何日も同じ物を着けていたという女性が多い。洗濯したくても水が不足していたり男性の目に付かない物干し場がなかったり。震災から約1カ月後の4月15日に内閣府が公表した避難所実態把握調査(被災3県323カ所が回答)では、「替えの下着がない」「替えの下着はあるが洗濯できず不足」と回答した避難所が合わせて46・8%に上った。

 NPO法人・参画プランニングいわての田端八重子理事は「汚れたショーツをはき続けるのは女性にとって大変な屈辱。震災のショックや心労に拍車を掛けた」と話す。

 体を清潔に保てない上、汚くて男女別でないなどトイレ事情が劣悪で排せつを我慢することも。男性に比べ尿管が短いこともあり、ぼうこう炎や膣(ちつ)炎になる女性もいた。

 避難所のプライベート空間も十分確保されていたとは言い難い。イコールネットが避難所で過ごした被災女性329人に行ったアンケートによると、「避難所にあった設備」に答える設問で「間仕切り」は36人、「授乳室」は14人、「男女別の物干し場」は13人にとどまった。間仕切りが支援物資として届いていたものの「一体感を損なう」との男性の意見で使われていないケースもあった。

 こうした環境は、セクハラや性被害を助長した。被災県の女性団体には▽嫌がらせで隣に男性が寝てくる▽更衣室がないため物陰で着替えているとのぞかれた▽下半身を見せられた-など多数の被害が寄せられている。レイプの報告もあった。

 これらはれっきとした犯罪だ。しかし、「つらいのは皆同じ」「加害者も被災者」といった非常時特有の風潮から声を上げにくく、申告しても周囲に抑え込まれることが多かったという。

 女性たちはなぜ不便を強いられ、人権を脅かされるような事態に耐えなければならなかったのか。

 「避難所で運営の主導権を握ったのは、自治会長などを務める男性。男性には言いにくい女性の意見や要望はかき消された」と、イコールネットの宗片(むなかた)恵美子代表理事は指摘する。サイズの合ったショーツとブラジャー、乾燥して傷む肌に欠かせない化粧水やハンドクリーム-。男性主体の体制の中では、女性の切実なニーズはくみ上げられなかった。

 一方、岩手県宮古市の女性団体・あじさいの会の伊藤エミ子代表は「自宅近くの避難所は男性がまとめ役だったが、半分は女性なんだからと意見を積極的に聞いて配慮していた」と振り返る。「平時の女性に対する意識が、非常時に生きてくる」と分析した。

 巨大災害は、社会に蓄積されたひずみや問題をいや応なく顕在化させる。先の震災でも男女格差や共同参画の遅れが露呈し、女性を追い込んだ。女性リーダーの配置や避難所運営の見直し、それを下支えする男女共同参画意識の底上げを図ることが急がれる。

徳島の防災事情 女性リーダーまだ少数

 災害対策に女性の視点を-。東日本大震災の教訓を生かし、被災地では防災分野や復興計画作りに女性を参画させる動きが出てきている。徳島県内でも女性に配慮した防災施策が打ち出され始めたものの、現状はまだまだ不十分だ。

 女性のニーズを反映させるために欠かせないのが女性リーダー。徳島県によると、防災士の有資格者1128人のうち、女性は206人(7月時点)で、全体の2割以下にとどまる。災害時に避難所運営を担う自主防災組織も県内に2745団体あるが、女性の代表者は5%にも満たない。

 さらに、地域防災計画を練る防災会議の女性委員比率は24市町村でいずれも15%以下だった。最高は徳島市の13・6%で、44人中6人。女性委員ゼロの自治体は、全体の3分の1に当たる8市町村に上る。

 被災直後から確実に必要となる生理用ナプキンも、3分の2の16市町村で全く備蓄されていなかった。

 一方で、女性の安全確保やプライバシーへの配慮を盛り込んだ避難所運営マニュアルを徳島県と一部の市町が作るなど、対策は講じられつつある。しかし、制度や設備が整い男女共同参画意識が高まるのを災害は待ってくれない。女性自身も被災時の困難を想定し、しっかり備えることが大切だ。(2015年9月6日 徳島新聞掲載)