防災訓練で炊き出しに取り組む女性たち。性的役割分担意識は、平時からどこの地域にも根付いている=鳴門市のウチノ海総合公園

 2015年9月1日に鳴門市のウチノ海総合公園で開かれた市総合防災訓練。男性消防団員らが災害救助演習に取り組む傍ら、地元の婦人会メンバーはエプロン姿で炊き出し訓練に励んでいた。

 どこでも見られる光景ではある。しかし、平時から地域に根付くこうした性別役割分業が、東日本大震災で女性たちを苦しめた。

 宮城県南三陸町で被災した40代女性は自治会の要請を受け、無事だった自宅から毎日最寄りの避難所に通って炊き出しに従事した。女性だけで朝6時から夕方5時まで調理室にこもり、20~30世帯分の食事を1日3回、ボランティアで作る。「献立の考案から片付けまでして、本当に大変だった。負担が女性ばかりに偏っていると感じた」と振り返る。

 冷たい弁当より温かくて栄養のある物が食べたいというニーズにより、震災の数日後から炊き出しを始めた避難所は多かった。しかし、男女の関係なく分担しようという動きは少なく、大規模な所で数百人分にもなる調理の負担は女性に重くのしかかった。自衛隊が設置した大型風呂やトイレの掃除を、避難所の女性だけで担うケースもあった。

 支援に取り組んだNPO法人参画プランニング・いわて(盛岡市)の田端八重子理事は「被災した沿岸部は特に、生活に関わる労働は女がすべきだとの考えが強い。女性が集団生活のケアに追われる一方、がれき処理で日当を得る男性もおり、無給の彼女らは不満を募らせた」と指摘する。

 妻が家事の多くを担う家庭が多い中、不慣れな男性が調理を担当するのは実際難しい部分もあっただろう。しかし、当然のように炊事負担を強いられる女性が感じた不平等感や苦痛を、同じ空間でいた男性はどれだけ理解できていただろうか。

 女性を取り巻く就労状況や震災に伴う求人も、男女格差を拡大させる要因となった。
 総務省の就業構造基本調査(2012年)によると、被災3県の正規雇用者率は男性77・7%、女性44・4%と大きな開きがある。その上、震災が原因で離職した人の割合は男性が全体の2・4%だったのに対し、女性は4・1%。女性がより影響を受けている実態がうかがえる。

 女性団体のNPO法人イコールネット仙台(仙台市)の宗片恵美子代表理事は「被災した沿岸部の食品加工場などは、真っ先に女性を解雇した。パート勤務など不安定な立場だったこともあり、雇用の調整弁にされていた」と指摘する。

 政府と自治体が緊急的に用意した仕事も建築関連など肉体労働がほとんどで、女性にはそぐわない。震災によって一層働きづらくなった環境と、性別に関する凝り固まった意識が拍車を掛け、男女の社会的役割分担や格差はより強固になっていったといえる。

 被災地で露呈した数々の問題は、表面上進みつつあるかに見える男女共同参画社会のもろさを露呈した。ひとたび災害が起こればまた、女性たちは不条理に耐え忍ぶことになるのか。被災地からの声なき声に耳を澄ませ、男女ともに変わる努力をすべきだろう。

(2015年9月25日 徳島新聞掲載)=肩書きは当時