国連での演説を前に長女ニーブちゃんにキスをするニュージーランドのアーダン首相=9月24日、ニューヨーク(ロイター=共同)
産休から復帰後、職員と打ち合わせをする南千晴議長(左)=群馬県榛東村議会

 ニュージーランドではアーダン首相が産休を取得し、9月に赤ちゃんと一緒に国連本部での会合に出席して話題となった。一方、日本の場合は女性議員を増やそうと「政治分野の男女共同参画推進法」を制定したものの、政治活動と生活を両立させる環境整備は不十分だ。ただ近年、全国の地方議会でなり手不足などを背景に、出産だけでなく、育児や介護による欠席を規則で定めるケースも出てきた。女性をはじめとする多様な候補者確保につながるか―。

 まずは最近、「産休」を取った女性議員に、経験を聞きたい。徳島県内にはいないので、他県の女性議員に取材した。

 群馬県榛東村議会で唯一の女性議員である南千春議長(38)=無所属、4期目=は、今年6月上旬に第1子を出産した。約2カ月の「産休」の後、8月上旬から公務に復帰している。

 昨年の12月定例会後に議会に妊娠を報告。年明けから、議会の欠席規定の見直しが検討され、事故と出産だけを定めていた欠席規定に、看護や介護、育児、疾病などが加えられた。産休期間も労働基準法に準じ、「出産前6週間、出産後8週間」と明示した。

 さまざまな欠席理由を明示することで、「多様な人が議員に参画できるという社会へのメッセージになる」と南議長は語る。

 9月定例会には、夫や、近くに住む母親に子どもを預けて出席。10月から保育園のならし保育が始まったが、感染症にかかって入院し、看護に追われるなどなかなかスムーズにはいかない。もっとも、スムーズにいかないのが子育ての常ではある。

 仕事と子育てのバランスを模索しつつも、「出産して、妊産婦や乳児への行政サービスや、子育て中の女性が直面する課題がより細かく分かるようになった。これまで以上に、議会にママたちの声を届けていきたい」と前向きだ。

 沖縄県北谷町の宮里歩議員(39)=共産党、3期目=は、2017年3月定例会終了後から約3カ月の「産休」を取った。復帰後、年度途中であることから子どもが保育園に入れず、定例会中は議員控室を保育スペースに。ファミリーサポートセンターを通じてシッターを確保し、会議に出席した。今年4月、子どもは晴れて、保育園に入園した。

 同町議会では15年に「出産」「配偶者の出産補助」を欠席理由として規定に明示。宮里議員の妊娠を受け、産休期間を議会運営委員会で協議し、「100日程度」という内規を定めた。宮里議員は「休む理由を規定で明示しておいた方が、町民の方の理解を得やすい」とする。

 妊娠中から同僚議員や事務局職員に気遣ってもらったとし、「制度だけでなく、運用面も含めた環境整備があれば(出産や子育てをする女性議員も)頑張っていこうと思えるのではないか」と話す。

 出産は「事故」?

 日本の市町村議員の出産はかつて、「事故」扱いだった。事情はこうだ。

 議員は労働基準法が定める「労働者」には当たらず、産休や育休の適用外となる。会議の欠席については議会がそれぞれの規則で定めるが、かつての市町村議会の大半では、事故による欠席という規定しかなかったのだ。

 「出産は事故なのか」―。そんな議論があり、15年に市議会、町村議会がモデルとして参照する「標準規則」に、出産による欠席が追加された。これにより、全国の市町村議会の規則で出産が欠席理由に加えられていった。

 これに先立ち、参院では2000年、衆院では01年に、議員の妊娠をきっかけとして出産を欠席理由に明記。05年には衆院議員だった高井美穂・徳島県議も産休を取っている。都道府県議会の標準規則に「出産」が追加されたのは02年だ。

 県内の議会のうち、今も出産が欠席理由として明記されていないのは、勝浦町議会(女性議員2人)と佐那河内村議会(同0人)のみ。両議会とも「現在、該当者(出産年齢に当たる女性議員)がいないので、改正に至っていない」とする。

 改革にジレンマ

 しかし、「産休」だけで十分なのだろうか。産後2カ月程度では体調も万全でない。いつ寝て起きるか分からない新生児との生活で、精神的に疲れ果てる人も多い。一般労働者には通常1年(事情により最長2年)の育休制度がある。また男性も、育児や介護を担うことは権利であるし、社会の要請でもある。

 榛東村議会のように、一部議会では、介護や育児による欠席を規則で定める動きがある。

 県内では、北島町議会が9月、配偶者の出産補助での欠席を認めることを決めた。「本人またはその配偶者の出産等のため出席できないとき」と「等」の表現を入れることで幅をもたせ、介護などにも適用する。「実際の運用は議長と相談することになるが、育児も対象となりうる」と北島町議会・議会改革推進特別委の武山光憲委員長(71)=無所属、5期目=は言う。

 北島町議会では今年1月の補選で女性議員が無投票当選したが、それまで女性議員はずっとゼロだった。また、15年4月の町議選が56年ぶりに無投票になっている。多選も目立ち、定数14人のうち5期目以上の議員が9人もいる。

 若い世代や女性が立候補しやすい環境整備に向けた方策を2年かけて検討し、出た結論のひとつが欠席規定の改正だった。そのほか、町から補助金を受ける団体の役職と議員の兼職を可能にし、報酬引き上げも見据えて定数を1人減らすことにしている。

 立候補しやすい環境をつくることは、現職議員にとっては競争相手が増えることを意味するのではないか。武山委員長に問うと、「ジレンマはある」とした上で、「最終的に出るか出ないかは任せるが、環境整備の責任は議会にある」と答えた。改革の効果は来春の統一地方選で明らかになる。

 県内議長2人 「規定だけでは効果薄く」

 共同通信が実施した全国議長アンケートでは、女性議員を増やす取り組みとして、育休や介護休の規定充実が有効とする回答が目立った。県内でも7市町の議長が有効としている(表参照、9月16日付朝刊に詳報)。しかし、育休などを有効とし、女性議員増に向け積極的な姿勢が回答から見えた議長2人に話を聞くと、「現実には休業規定だけでは効果は薄い」と言う。

 育休などを有効と回答した勝浦町の篰公一議長(66)=無所属、3期目=は、「制度よりもまず、女性が出馬するための環境づくりが必要だ」と話す。

 神奈川県大磯町議会や兵庫県播磨町議会は女性議員の割合が比較的高いことで知られるが、「これらは(新興住宅地が多い)新しい町で、政策で議員を選ぶ。一方、こちらでは、よく新聞でも批判されるように、地縁、血縁による選挙が根強い」と都市部との選挙の違いを強調する。

 議員は地区の代表という性格も強い。「今は違うが、昔は区長をしてから議員になるという流れがあった。しかし、区の役員に女性が就いたことは、私が知る限りない」と根強く残る性別役割意識を指摘する。

 「現職が辞めるときに後継者を女性にする方が、漠然と制度を作るよりも女性議員が増える」と提案した。現に、2人いる女性議員のうち、一人は共産党所属で、もう一人は引退議員から地盤を引き継いでいる。

 板野町議会の高橋勲議長(69)=無所属、4期目=も、育休・介護休などを有効と回答したが、「それは枝の部分の話で、そもそもは議会に魅力があるかどうか。議員側が発信してこなかったこともあり、女性に限らずなり手不足は深刻」と言う。

 女性議員は1991年以降おらず、平均年齢は73歳と高齢化も進む。91年の選挙時は20人だった議員定数は13人となり、「当選に必要な票が増え、新人が出にくくなっている」とも説明した。2015年選挙では、30、40代の新人が落選している。

 女性を含むなり手不足対策としては、落選時のセーフティーネットの意味も含め、「勤めながら議員ができる環境を(社会全体で)整えるなどの仕組みが必要」と話した。

 政治分野の男女共同参画推進法
 世界的に最低レベルである女性議員の比率を上げるため、国政、地方選挙での候補者数を「できる限り男女均等」にするよう政党に促す理念法。今年5月に施行され、来年春の統一地方選や夏の参院選にも適用される。

 編集後記
 アーダン氏はニュージーランド3人目の女性首相です。出産後はテレビ司会者の夫が育児を担当。2人目の女性首相だったクラーク氏はツイッターで夫妻を祝福し、「これが21世紀のニュージーランドだ」と評しました。

 さて、皆さんが住む市町村の議場を見渡して、「21世紀的」と誇れる点は見つかりますか。うーん、子どもの頃に想像していた「21世紀」はあんなにキラキラしていたはずなのに・・・。

 全国議長アンケートの県内回答を見ると全体的に、女性議員の増加に向けた取り組みへの関心の低さが感じられます。ちなみに現在、議長は全員男性です。改革に熱心な議会もありますが、議会に多様性がもたらされるかどうかは、結局私たち有権者の意識次第だと思います。

 来春には統一地方選が控えています。平成も終わろうとしています。私たちの暮らしのあれこれを決める身近な議会が、いつまでも昭和の頃と変わり映えしないままでいいのでしょうか。