性被害を告発する「#MeToo」運動は昨年から続き、世界的に広がった。日本では4月、福田淳一財務事務次官が、女性記者へのセクハラ問題で辞任。麻生太郎財務相は「はめられ訴えられているんじゃないかとか、いろいろなご意見は世の中にいっぱいある」などと、二次被害につながる発言を繰り返し、性被害への認識の低さを露呈した。

 米国では「#MeToo」の発端となった報道がピュリツァー賞を受賞。11月の中間選挙では、女性蔑視発言を繰り返すトランプ大統領への反発で、女性議員が躍進した。また、ノーベル平和賞を手にしたのも性暴力と戦う人たち。レイプの被害者の救済に取り組む産婦人科医デニ・ムクウェゲ氏(コンゴ)と、性暴力の被害者で人権活動家のナディア・ムラド氏(イラク)だ。
 日本ではこれほど大きな社会の動きはない。しかし、石を水面に投げると、必ず波紋は広がる。

<harassとは猟犬をけしかける声  その鹿がつかれはてて死ぬまで>

 セクハラに悩む女性を重ね合わせた歌だ。第29回歌壇賞(短歌の公募新人賞)は、この作品を含む、フェミニズムをテーマとした川野芽生さんの連作に贈られた。第159回直木賞を受賞した島本理生さんの「ファーストラヴ」(文芸春秋)は、性暴力被害が題材のリーガルサスペンスだった。

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 「女人禁制」という古めかしい言葉が注目を集めた。発端は4月に京都府舞鶴市であった大相撲の巡業。土俵上で倒れた舞鶴市長の救命処置に当たるため、女性看護師が駆け寄ったところ、場内放送を担当する若手行司が「女性は土俵から下りてください」と何度も呼び掛けた。

 兵庫県宝塚市の女性市長が求めた土俵上でのあいさつを日本相撲協会側が断るという出来事もあり、「伝統か、現代の価値観か」という議論がなされた。

 しかし、吉崎祥司・北海道教育大名誉教授らによる論文「相撲における『女人禁制の伝統』について」は、女人禁制の「伝統」は相撲の権威付けのため、明治以降に虚構されたという説を提示。インターネット上で公開されたこの論文は広く読まれ、「創られた伝統」(「伝統」ではないものが、そう言い立てられること)という概念もスポットを浴びた。

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 数字はうそをつかない。しかし、その数字は操作されているかもしれない。8月、東京医科大が遅くとも2006年から、入試で女子と3浪以上の男子に不利に働く得点操作を行っていたことが判明した。

 付属病院などを抱える医大にとって、学生は将来の働き手でもある。世の性別役割意識の影響で育児や家事を担いがちな女性が、多忙な医療現場から門前払いされた格好だ。内部調査委員会で委員長を務めた中井憲治弁護士は「もはや女性差別以外の何物でもない」と断じた。

 「女は大学に行くな、という時代があった」というコピーの神戸女学院大の広告が4月、話題となったが、教育における男女差別は過去のものにはなっていなかった。

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 4月から9月まで放映されたNHK連続テレビ小説「半分、青い。」では、家族愛にあふれ、素直で前向きといった典型的ヒロイン像の殻を破る主人公が登場した。夢だった漫画家の仕事は才能の枯渇により見切りをつけ、スピード婚した相手と離婚した後は、いったん帰郷したものの、東京で一人子育てしながら働く道を選ぶ。しがらみにとらわれず、「個人」として生きるヒロインだったが、ツイッター上では賛否が渦巻いた。

 10月に始まった「まんぷく」の主人公は演技派俳優安藤サクラが演じるものの、今のところ「よい子」で夫を立てるキャラクター。典型的ヒロイン像への回帰が見られる。

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 現在の婚姻制度への異議申し立てもなされた。1月にはサイボウズの青野慶久社長らが夫婦同姓を強制する現行法により、精神的苦痛を被ったとして国を提訴した。

 しかし、制度を変える側の国会は、旧態依然とした男性中心のまま。5月に「政治分野における男女共同参画推進法」が成立した一方、10月に発足した第4次安倍晋三内閣の女性閣僚は片山さつき氏ただ一人だった。

 「#MeToo」、土俵の女人禁制、東京医科大の差別入試―。女性が直面する課題への認識は広がりつつあるものの、まだ性差別は根強く残る。2018年の出来事を振り返る。

 編集後記

 先日、SNSを眺めていたら「サラダ取り分け禁止委員会」なるものをつくった女性の記事が流れてきました。飲み会で大皿の料理を取り分けることが、「女子力」披露の場となっていることへの問題提起だそう。

 皆さんはサラダを取り分けますか。それは「女性だから」ですか。人としての気遣いでしょうか。飲み会で「取り分けは女性」という空気を感じたことはありますか。

 これから忘年会シーズン。大皿サラダを目にする機会も多いでしょう。性別役割にとらわれない生き方を、サラダの取り分けから実践してもいいかもしれません。