角田由紀子弁護士

 昨年3月、全国で性犯罪の無罪判決が4件相次いだ。背景には何があるのか。角田由紀子弁護士に聞いた。

 ―現状の刑法では同意のない性交であっても、暴行・脅迫などの条件を満たさないと強制性交等罪が認められないのはなぜか。

 日本の女性が扱われてきた歴史と密接に関係している。刑法は1907年に家父長制の下で成立した。女性は何の権利もなく従属的な立場に置かれ、子どもを産むのが義務だった。男性にとってセックスは、血統を維持するための権利行使なので女性の意思など関係ない。そういうバックグラウンドがある。

 ―性犯罪の無罪判決が全国で出された。

 (19歳の実子に父親が性行為をした)名古屋地裁岡崎支部の判決文には「刑法178条2項は、不同意の性行為を全て犯罪にするものではない」とある。この文言は、ある意味男性側から見た性行為の実態を語っていると思う。女性が性交に同意していなくても激しい暴力などがない限り、合法とみなしてしまう。女性の人権や尊厳が踏みにじられてしまっている。

 ―刑法はどう変えるべきか。

 暴行・脅迫要件を廃止し、同意のない性交をレイプと規定したスウェーデンの改正刑法が参考になる。ここでいう同意とは「自発的なイエス」。セックスをしようと誘う人は、相手が自発的に性行為に参加しているかどうか確認する義務がある。「睡眠薬の使用」「だました」など、同意を取り付けたとみなさないケースも明記した。被害者を守るという視点に徹底して立っており、日本も同じようにしていくべきだ。

 ―女性への暴力の根底にある性差別をなくし、ジェンダー平等を実現するためにどうするべきか。

 ジェンダーを形づくっているものは政治だと思う。例えば非正規労働者の約7割は女性で男性と賃金格差がある。政治分野への参画も進んでいない。政策を示して予算をかければ解決する。日本のジェンダー・ギャップ指数は121位で、その前後はアラブ首長国連邦とクウェート。女性の権利が制限されたイスラム教の国々に挟まれている。この現実を直視し、政府は本気でジェンダー平等に取り組むべきだ。

 性犯罪事件の無罪判決 昨年3月に名古屋地裁岡崎支部や福岡地裁久留米支部などで4件相次いだ。名古屋地裁岡崎支部は19歳の娘と性交した父親について、性虐待を認定しながらも「娘が抵抗できないほどの支配関係になかった」とした。こうした判決内容を受け、性暴力撲滅を訴える「フラワーデモ」などの運動が広がるきっかけになった。