「居住地は発表してほしくなかった」。徳島県内で初めて新型コロナウイルスへの感染が確認された60代女性が徳島新聞の電話取材に応じた。集団感染したクルーズ船から下船した県内在住者は6人しかおらず、出発前に周囲にクルーズ船旅行を伝えていた中での発表だったため、「個人を特定しているのと同じで、会見後はストレスで眠れなかった」と、当事者としての心境を語った。

 女性は症状はなかったが、自身の安心のために2月25日の昼に検査を受けた。同日午後8時に陽性の結果が判明。同15分に保健所の担当者から連絡が入り、検査結果や入院の手続き、マスコミへの公表に関する説明を受けた。その後、再度連絡があり、下船後の移動手段や居住自治体名などの公表内容が伝えられた。

 女性は会見での発表内容について、「県内在住者の下船者は6人のみで個人の特定につながる」と不安に駆られ、居住地の公表を拒否。下船後に乗った飛行機の便名についても「なぜ公開するのか」と抗議した。会見直前まで、保健所を通じて居住地と飛行機の便名の発表を控えるよう訴え続けたが、十分な説明がないまま午後11時50分ごろ会見を迎えた。

 会見翌日、旅行に行くことを伝えていた友人らから電話とメールが多く届いた。陽性なのか聞かれてうそをつきたくなかったので、返信ができなかった。

 女性は「心配していた通り、友人らから連絡が相次ぎ、保健所からの電話も取ることができないぐらいショックを受けた。後になって、友人からは、ネット上に家が特定されるような書き込みもあったと聞いた。子や孫は県外だが、もし県内にいたら、子は職場に出勤できず、孫が学校でいじめに遭っていたかもしれない。そんなマイナスの思いが次から次へと頭に浮かんだ」と話す。

 その上で「個人情報を出された本人の気持ちを察する人はいない。感染防止だとしても、そこまでして公表が必要なのか疑問だ」と語った。