石井町の徳島大生物資源産業学部農場(旧県農業大学校)にある徳島椿園(つばきえん)を歩いた。うららかな朝。ツバキの花は大抵、盛りを過ぎてしまったけれど、何本か枝のそこかしこに大輪を付けている木があった
深みのある赤が艶っぽい。他と歩調を合わせない、あまのじゃくな木だなと思いつつ視線を落とすと、別の形で目を楽しませるものが
ご存じの方は多かろう、ツバキは花びら一枚一枚が散るのではない。咲いている状態のまま付け根からぽとりと地に落ちる。「落椿(おちつばき)」という
遊歩道の右左に散らばる落椿は根を張って咲いているかのよう。あでやかなのだが、斬首を連想させるとして忌み嫌われることもある。ほなけんど、と写真を撮っていた先客の男性が言う。「こんな花の落ち方って、ツバキは実に潔い」。なるほど
このところ、首を取る、取られるという動きが目に付いて穏やかでない。サッカーでは成績不振を理由に日本代表監督が突如解任された。学校法人「森友学園」を巡る財務省の決算文書改ざんや、自衛隊イラク派遣部隊の日報隠蔽の問題で、野党は担当大臣に辞任を迫る。いずれの事案も内実は、潔いとは言い難い
ツバキの花言葉を引いてみる。控えめな優しさ、気取らない優美…。一歩下がって謙虚にいこう。図らずも関心事と結びついたツバキを見て、思う。