昨年4月に東京で始まり、またたく間に全国へ広がったフラワーデモ。最終回を迎えた8日、大勢の通行人が行き交う徳島駅前で性被害について話す参加者を見ながら、認定NPO法人「ウィメンズネット・こうべ」(神戸市)の正井禮子代表のことを思い出していた。

 「阪神大震災時の性暴力について、私は長年沈黙した」と彼女は言う。多数の被害相談を基に行政へ対策を求めたり街頭デモをしたりした。すると、世間からすさまじいバッシングを受けた。一部メディアには「被災地レイプ伝説」とまで書かれた。1990年代初頭から女性支援にまい進していた正井代表でさえ、性暴力を語るのは難しかったのだ。

 あれから約25年。フラワーデモのムーブメントが起こった。4件続いた無罪判決は女性の尊厳を軽視し、性差別的な刑法を容認し続ける日本社会の有り様を露呈した。怒りや悲しみ、「変えたい」という気持ちが被害者らを突き動かした。

 都市部に比べ男尊女卑思想が根強く、より語りにくい地方へ波及したことも大きな成果だった。「わがまち」のデモを通じ「自分が受けていたのは性暴力だった」と気付いた人もいるだろう。徳島でも「初めてこういう場に来た」と話し、明るい表情で帰っていった女性がいた。

 「性暴力のないジェンダー平等社会」をゴールとしたとき、現在地はどのあたりだろうか。日本のジェンダーギャップ指数は世界121位に低迷。有名企業経営者のセクハラ行為や医大の女子減点問題など、道のりの遠さを突き付けるような事象が相次ぐ。

 それでも、社会は変わると思う。正井代表は阪神大震災の教訓を生かし、東日本大震災では精度の高い調査を実施して災害下の性暴力をあぶり出した。女性たちはフラワーデモを通じ、痛みを共有してつながるすべを知った。

 変化のための種は各地にまかれた。もう一人じゃない。声を上げ続けていこう。