新型コロナウイルスの感染拡大を考慮して政府が追悼式を中止するなど、今年は各地で関連行事を見送るケースが相次いでいる。異例の事態ではあるが、記憶を風化させてはならない。

 岩手、宮城、福島の3県を中心に大きな被害に見舞われた東日本大震災から、あすで9年になる。

 被災地は着実に復興を遂げている。3県での災害公営住宅整備は9割超が完成した。津波に備える高台移転のための宅地造成もほぼ終え、道路や防潮堤整備も進んだ。

 一方で、今も約4万8千人が自宅を離れ、全国各地で避難生活を余儀なくされている。被災した9割の市町村が、震災前の人口を取り戻せていない。宮城県女川町は41%も減ったままだ。

 被災者の生活再建という観点からすれば、いまだ道半ばである。

 仮設住宅生活を解消できる兆しが見えてきた半面、災害公営住宅に移った住民らへの支援は、ますます重要になっている。

 3県の災害公営住宅で暮らす被災者に共同通信が最近行ったアンケート調査では、近所付き合いが「減った」という人は半数近くを占めた。

 災害公営住宅や仮設住宅で誰にもみとられずに亡くなる「孤独死」は、震災発生から3県で約500人に上る。大半は高齢者であり、見守り活動や心のケアの取り組みを拡充するのが急務だ。

 災害公営住宅で計3億1千万円の家賃が滞納されている事態も見過ごせない。入居者は高齢や資金不足から自宅再建を断念したケースがほとんどで、震災後に職を失ったり、病気で働けなくなったりした人も大勢いる。

 経済的な困窮は一段と厳しくなるとみられ、きめ細かな対応がますます求められよう。孤立を深める被災者を置き去りにすることが、あってはならない。

 政府は、復興庁の設置期限を2030年度末まで10年間延長するのを柱とする改正法案を、今国会に提出した。

 ソフト事業を重視した手厚い対策と、福島第1原発事故の復旧・復興事業を継続する必要性を踏まえれば、延長は当然の判断である。

 特別会計で復興事業を賄う「復興期間」も10年延長となる。必要な事業へはちゅうちょすることなく積極投資をしてもらいたい。

 ただ、原発事故被害を除く復興事業を5年間で終えるという政府方針には、首をかしげざるを得ない。事業が強引に打ち切られないかという、地元自治体の不安はもっともだ。期限ありきで臨まないよう、くぎを刺しておきたい。

 この際、全国知事会が提言している「防災省」の創設も視野に入れてはどうか。

 本県など南海トラフ巨大地震や首都直下地震に備える自治体にとって、災害予防も専門的に扱う省庁の存在は大きな意味を持つ。政府は前向きに検討してほしい。