結婚などで戸籍名が変わった場合、職場での旧姓使用を要綱などの規定で認めている徳島県内の自治体は県と6市町しかなく、教育委員会は県教委と5市町教委にとどまることが徳島新聞の調べで分かった。国の統計では、結婚で改姓するのは9割以上が女性側。仕事上のデメリットも大きく、自己喪失感を抱える人もいる。「女性の活躍」が喧伝(けんでん)される中、多くの自治体や教委では旧姓使用への理解すら進んでいない。

 5月に県と24市町村および各教委に調査票を配り、回答を得た。

 旧姓使用を「認めていない(認める規則などはなく、習慣として認めた実例もない)」と回答したのは徳島、鳴門、阿南、吉野川の4市を含む14市町。

 認めていない理由について、徳島市の担当者は「希望もほぼなく、検討段階に至っていない」と話す。阿南市は「希望者はいるが、多数意見ではない。業務上や人事管理上の支障についても十分に研究する必要がある」と回答した。その他の12市町は「要望がなく、検討したことがない」とした。

 県内教委の中で「認めていない(同)」としたのは、徳島、鳴門、吉野川の3市教委など11市町村教委。ここでも「要望がない」ことを理由に挙げた教委が大半だった。

 4市町村と7市町教委は「規則などはないが、要望があれば認めている」とした。

 県採用の教職員は、市町村をまたいで異動し、勤務先の学校などを管轄する自治体の規則に従う。このため「県採用の教職員のみ認めている」(東みよし町教委)とする回答もあった。

 県は2001年から旧姓使用を要綱で認めている。同年度の旧姓使用者は10人だったが、現在では62人(女性48人、男性14人)に増えた。旧姓を使う県女性職員(44)は「何年かぶりに話す人とも氏名が同じことで気付いてもらえ、関係性を保てるのがうれしい」と言う。

 一方、戸籍名しか認めていない自治体の管轄する学校に異動し、旧姓が使えなくなった女性教員(48)もいる。異動するまで旧姓を使っていた理由について「教育者として生徒たちに『女性は結婚したら名前が変わる』ことを見せたくなかった」と説明する。戸籍名を使う現状に「結婚前の自分はもうどこにもいないという寂しさがある」と話した。

 二宮周平・立命館大教授(民法)は「生まれた時からずっと使っている旧姓はまさに人格権の一部。戸籍姓の強要は人格権の侵害に当たる」と指摘する。自治体や教委に旧姓使用を認める要綱などがあれば、「旧姓使用を求めて職場と掛け合うことができない人の中からも使う人が出てくるはず」とし、明文化による周知徹底の重要性を強調した。