音楽教室のレッスンで先生が楽曲を演奏したら、著作権使用料を払わなければならない。そんな判決を東京地裁が出した。

 質の高い創作活動を支えるには、作詞家や作曲家らの権利を守ることが不可欠だ。ただ、レッスンの演奏にまで徴収の網を掛けるべきなのか、疑問は拭えない。

 原告は「学ぶ機会が減少する」として、知財高裁に控訴した。音楽文化の普及、発展に関わる問題である。審理の行方を注視したい。

 訴訟は、2017年に日本音楽著作権協会(JASRAC)から著作権料の支払いを求められたヤマハ音楽振興会など、音楽教室を営む全国約250の会社や団体が、JASRACに徴収権限がないことの確認を求めて起こした。

 主な争点は、教室の生徒が「公衆」に当たるのかどうかと、技術向上のためのレッスンが「聞かせる目的」での演奏と言えるかの二つである。著作権法が、公衆に直接聞かせる目的で演奏する権利を保護対象としているからだ。

 原告は、生徒は公衆ではなく、演奏は「聞かせる目的」に当たらないと主張した。

 これに対して判決は、音楽教室は誰でも受講でき、多くの生徒を抱えているので、不特定多数の公衆に当たると指摘。教師が自分の演奏を注意深く聞かせているのは明らかで、聞かせる目的があると認定した。

 違和感があるのは、マンツーマンのレッスンでも生徒を公衆と見なし、技術を教える演奏を、コンサートなど聞き手に感動を与えるための演奏と同列に捉えたことだ。

 市井の教室は学校教育と共に、音楽に親しむ人を増やし、音楽文化の裾野を広げる役割を担っている。そうした点への配慮も欠けているのではないか。

 作曲者らの委託を受けたJASRACはこれまで、社交ダンス教室や飲食店でのカラオケ、歌謡教室、楽器演奏を学べるカルチャーセンターと、徴収範囲を広げてきた。

 音楽教室からの徴収は、全国約700の事業者が開設する約7千の教室を対象とし、使用料を年間受講料収入の2・5%などとする方針だ。

 原告と、個人の教室を除く一部の事業者からは既に徴収を始めており、契約が進めば年間で最大約10億円に上ると見込まれる。将来は個人教室からも取るという。

 事業者や、受講料に転嫁される生徒の負担増は小さくない。「子どもを音楽から遠ざける」といった批判が上がるのは当然だろう。全国の教室などでつくる「音楽教育を守る会」は約57万人の反対署名を集めた。

 著作権法は「著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与する」ことを目的に掲げる。

 問われているのは、権利保護と演奏家育成とのバランスをどう取るかだ。JASRACは不安の声に耳を傾けてもらいたい。