世界遺産登録を目指す鳴門の渦潮=鳴門海峡

福家清司委員

 「鳴門の渦潮」の世界遺産登録を目指し、徳島、兵庫両県などが推進活動を本格化させて5周年を迎えた。渦潮が世界遺産にふさわしいかどうか、その価値を科学的に調べている学術調査委員会の福家清司委員(徳島県埋蔵文化財センター理事長)に話を聞いた。

 人間の歴史文化と深い関わり

 しまちゃん 5周年を迎えて、周りの反応はどう?

 福家委員 以前なら「鳴門の渦潮」と「世界遺産」は結び付かなかったはず。「世界遺産にしてほしい」とか「なるんですか」との問い合わせがだんだん増えてきたので、かなり活動が認知されてきたと思います。

 しまちゃん 今までどんなことを調べてきたん?

 福家委員 世界遺産の条件は「顕著な普遍的価値」。つまり「誰が見てもさすがだなあ!」と思ってもらわなければなりません。徳島県側は文化の側面から、兵庫県側は自然の側面から渦潮の価値を調べています。徳島側は渦潮が描かれた文学や絵画、文献などを分析して2冊の報告書にまとめました。

 兵庫側はドローンやレーザーを使って実際に渦潮を測定したり、ノルウェーの渦潮を現地調査して情報交換したりしています。

 しまちゃん ノルウェーなど海外の渦潮とも共同で考えていくとのニュースが出とったね。

 福家委員 世界遺産としてユネスコに推薦してもらう流れとして、まずは国内の候補リストに載せてもらう必要があります。

 それとは別に、諸外国と共同で登録申請する方法があります。この場合は日本国内のリストに入る必要はありません。

 国内だけでも「奄美・琉球諸島」など他候補が控えているので、チャンスが来るまでしっかり地盤を築いている状況です。世界の渦潮と協力し合うことで申請への可能性が広がるわけです。

 しまちゃん 鳴門の渦潮は「世界三大潮流」の一つなんやってね。

 福家委員 これまで専門的な研究がなされてなかったので、明確な根拠はありません。それで、本当に「三大」としていいのかどうかも含めて調査しているのです。

 しまちゃん そういや、どうやって渦を巻いているのか考えたことないかも。

 福家委員 鳴門の渦潮は、鳴門海峡の狭く深い地形と潮の干満差が奇跡的に組み合わさって発生しています。地形などの条件が少しでも変われば渦になりません。

 しまちゃん でもどれだけ珍しいん?

 福家委員 生活圏に近い所で発生し、観光要素としては世界の中でもピカイチ。他の渦潮に比べ、人間の歴史文化との関わりが深いことが調査で分かってきました。

 例えば、江戸時代の文人たちが書き記した和歌や詩などの観潮記が群を抜いて多い。船に乗り間近に見た驚きを「日本一」「天下の険」などと最大級の言葉で表現しています。こうした記録の多さでは他に類を見ません。

 タイやワカメといった特産物のほか、固有の漁法など、独特な歴史を育んできました。いろんな方面から価値を説明できていくのではないでしょうか。

 しまちゃん 渦潮の上には大鳴門橋が架かっとるね。世界遺産としていけるん?

 福家委員 これまで、海上にある自然遺産や構造物がある自然遺産は候補として検討されてきませんでした。ただ環境保護を目指す上で、人類共通の遺産として訴える価値はあると思います。

 鳴門の渦潮は初めからあったわけではありません。鳴門海峡は12万~13万年前まだ陸地でした。間氷期に海水面が3メートルほど上昇し、海水が入り込み始めたのが約1万年前。今のような姿になったのは、縄文時代に当たるわずか5千~6千年前と考えられています。

 つまり、この先もあるとは限りません。地球温暖化が進んで北極や南極の氷が溶けて海水面が上昇してしまうと見られなくなります。世界遺産へのハードルは高いですが、徳島、淡路の誇れる財産として発信していきたいですね。