徳島市の吉野川南岸汽水域で採取したシジミから、国の規制値を上回るまひ性貝毒が検出された問題で、県産シジミを扱う県内量販店は店頭から撤去するなどの対応に追われている。鳴門ウチノ海を除く県沿岸全域に出されている二枚貝の出荷自主規制についても、解除時期のめどは立っておらず、影響は多方面に広がりそうだ。
徳島市西新浜町1のマルナカ徳島店では10日夕、吉野川産のシジミを店頭から撤去した。11日はそれまでに販売したシジミが、貝毒の発生した吉野川下流域で採れたものではないことを知らせる掲示をした。
常連客の主婦三木博美さん(69)=同市新浜町1=は「貝類は大好きだが、事態が収束しなければ買うのをためらってしまう」と困惑気味に話した。
県内31店舗を展開するキョーエイは、貝毒の原因となったプランクトンが県沿岸で検出された3月下旬から、二枚貝の売り上げが前年比で約2割減少。埴渕恒平専務(34)は「県外産は安全だと訴え、不安を取り除きたい」と懸念払拭(ふっしょく)に懸命だ。
海産物を提供する県内の飲食店にも、影響が広がる恐れがある。
すし店や海鮮料理店の店主らは「仕入れの停滞や客足の減少は今のところない」と口をそろえるが、一部では「魚を食べるのを敬遠されたら困る」と心配する声も上がる。
地魚料理が人気の「喜助」(徳島市中央通1)では、近海産の赤貝や大アサリを使った料理の提供を自主的にやめた。店主の箕浦浩さん(49)は「お客さんの安全を第一に考えた。今のところ営業に影響はないが、これから出てくるかもしれない」と話した。
吉野川はこれからゴールデンウイークにかけ、潮干狩りの親子連れらでにぎわう時季だ。県と徳島市は貝毒が同市沿岸部にまで広がったことを受け、吉野川と勝浦川の河口付近計10カ所に潮干狩りの自粛を求める立て看板を設置した。
徳島市中央卸売市場によると、17年の県産シジミの取り扱い量は約141トン。山内栄治副場長は「吉野川水系で貝毒が出たという話は聞いたことがない。巻き貝や魚など、他の魚介類が風評被害を受けないか心配だ」と危機感を募らせる。
県は4日から県内6保健所などに、消費者らを対象にした相談窓口を設置。県水産振興課の窓口には「魚や海藻を食べても大丈夫か」という相談が寄せられたという。同課は「毒化するのは二枚貝だけで、アワビやサザエのほか、海藻や魚にも一切影響はない」と冷静な対応を呼び掛けている。