千葉県野田市で2019年1月、小学4年の栗原心愛さんを虐待死させたとして、傷害致死など六つの罪に問われた父勇一郎被告の裁判員裁判で、千葉地裁は懲役16年(求刑懲役18年)を言い渡した。

 心愛さんは学校のアンケートで、被告からの暴力を訴え「先生、どうにかできませんか」と記述するなど、周囲に助けを求めたが、届かなかった。痛ましい虐待事件の中でも、胸が締め付けられる事案である。

 判決理由で前田巌裁判長は「尋常では考えられないほど陰湿で凄惨な虐待」などと指摘し、これまでの児童虐待事件と比べて異例の重い量刑とした。市民感情に沿った判断と言えよう。

 判決によると、勇一郎被告は19年1月22~24日、心愛さんに食事や十分な睡眠を取らせず、自宅の浴室に立たせ続けた上、顔に冷水シャワーを浴びせるなどの暴行を加え死亡させた。

 被告側は傷害致死罪の成立を認める一方、起訴内容の多くの暴行を否定しており、日常的な虐待があったかどうかが焦点だった。

 公判では、心愛さんの母=傷害ほう助罪で有罪確定=や被告の家族、当時担当した児童相談所の職員らが出廷。沖縄県糸満市から野田市に引っ越してきた17年7月ごろから、心愛さんが被告の虐待を訴えていたなどと証言した。

 これに対し被告は、心愛さんに冷水シャワーをかけるなどしたことは認めたが、「何度も暴れるので落ち着かせようとした」などと弁解。暴行についても曖昧な発言を繰り返した。学校アンケートの記述については「心愛がうそをついている」と主張、母の証言なども虚偽とした。

 被告の説明は客観的な状況と整合せず、前田裁判長は「信用できない」と退けた。

 違和感を覚えたのは、児童相談所の職員を畏怖させるなど「社会的介入を困難にした全ての責任は被告にある」と断じたところだ。

 心愛さんは複数回にわたり周囲にSOSを送っていた。それがなぜ届かなかったのか。千葉県や野田市などの検証結果では、行政の介入機会が13回もあり、「救えた命だった」とも報告されている。心愛さんの無念さを思うと、ふびんでならない。

 市教委は被告の威圧的な態度に屈し、学校アンケートのコピーを渡してしまった。県柏児童相談所も、心愛さんを一時保護したもののリスク判断が不十分なまま保護を解除し、痛ましい結果を招くことになった。「虐待対応の基本ができていない」と批判されても仕方があるまい。

 学校と児相との連携の在り方や、転居前と転居先の児相間での情報共有など、不備な点も浮き彫りになっている。

 「二度と繰り返してはならない」。行政機関は言葉だけで終わらせず、今回の事件を教訓に、幼い命を守るためのきめ細かな対策を早急に進めるべきだ。