保釈中の逃走を防ぐにはどうすればいいか。森雅子法相の諮問を受け、法制審議会が法整備を検討している。

 いまの保釈制度は、被告は逃げないという「性善説」に立っており、逃亡を問う罪はない。保釈保証金を納付させ、逃亡した場合は没収することで抑止するとの考えだ。

 それが限界に来ていることを裏付ける事件が昨年、相次いだ。神奈川県や大阪府などで保釈中に実刑が確定したり、保釈が取り消されたりした被告らが逃走。年末には前日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告が15億円の保釈金を納めながらレバノンへ逃亡した。

 人々の意識や社会情勢の変化を反映した制度につくり直す時期に来ていると言える。

 法制審での論点は主に二つある。

 一つは、刑法の逃走罪の適用を保釈中の被告に拡大することだ。逃走罪の適用は、刑務所の受刑者などが逃げた場合に限っていたが、対象を広げて抑止効果を狙う。

 現行の刑事訴訟法では、保釈中の被告が裁判所の呼び出しに応じなかった時の罰則もない。「逃げ得」を許さないように手を打つ必要があろう。

 もう一つは、衛星利用測位システム(GPS)の活用である。保釈の際、被告の身体に端末を装着し、位置情報を把握することで逃亡を防ぐ。

 海外では多くの国が導入しており、米国は端末の装着を義務付けている州が一般的で、英国も利用している。カナダは保釈中の中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)副会長の孟晩舟被告をGPSで監視するなどしている。

 ただ、大きな課題がある。「推定無罪」が原則の被告を常に監視することは人権の重大な制約につながる。いったん導入されれば、安易に広がる恐れもある。

 誰がどんな手段で監視するのか、プライバシーをどう確保するのか、コストに見合う効果はあるのかなど、問題点を洗い出し、慎重に議論することが求められる。

 逃走が増える原因の一つとして指摘されるのが、保釈率の上昇である。

 全国の地裁、簡裁の保釈率は2009年に15・6%だったが、18年は2倍の32・1%に拡大した。一方、逃亡したり、出廷などの保釈条件を守らなかったりして保釈を取り消された人は40人から3倍以上の127人に増えた。

 こうした状況に懸念の声も聞こえる。だが、否認すれば保釈が認められず、長期勾留で自白を迫る「人質司法」には、国内外から厳しい目が向けられている。被告の人権を守り冤罪を防ぐためにも、過度な勾留は減らさなければならない。

 肝心なのは、保釈の増加と逃亡防止を両立させることである。

 捜査・裁判上の要請と人権とのバランスをどう図るか。法制審では、保釈の在り方まで踏み込んで議論してもらいたい。