山から崩れた土砂にのみ込まれた民家=大分県日田市小野地区

 先の見えない不安感が集落に漂っていた。福岡、大分両県を襲った豪雨の影響で孤立状態となっている大分県日田市の小野地区に8日、徳島新聞記者が入った。停電と断水はこの日ようやく解消されたが、携帯電話がつながりにくく、テレビ、ラジオも受信できない状態が続く。外部からの情報が少ない上、二次災害の懸念も広がる。「いつ日常の生活に戻れるのか」。多くの住民は口をそろえた。 

 日田市北部の県境に位置する小野地区は市役所から直線距離で北に約10キロの山間部。豪雨で土砂崩れが発生したため、市中心部と結ぶ道路が5日から通行止めとなっている。

 車両が通れない迂回(うかい)路を歩いて地区に入った。地区の中心部を通る道路に出ると、豪雨の爪痕があちこちにあった。

 山肌はえぐられ、地区を貫く小野川には大きな岩や流木が散乱していた。川沿いには、水に漬かっていたり、泥や砂に埋もれて屋根だけ出ていたりする民家があった。山から崩れ落ちてきた土砂がたまってできたとみられる天然ダムも見られた。

 地区はなお土砂災害の危険性が高いため、この日も避難指示は解除されなかった。地区の集落の一つ、殿町では20人ほどが自衛隊のヘリなどで既に地区外に避難したが、残る住民約100人は自宅や集落の中心部にある集会所で過ごしている。

 「自宅を出たとしても、いつまで避難しなくてはならないか見通しが立たないので、ここに残ることを選んだ人が多い」。民生委員の足刈八枝子さん(68)はこう説明した。

 集会所の運動場には、自衛隊のヘリ着陸地を示す「H」の文字が書かれていた。田代恵子さん(64)=パート従業員=がふもとの避難所へ向かうため、母親(89)と共にヘリを待っていた。

 災害発生から3日間自宅で過ごしていたが、母親が高血圧症を患っているため「薬が必要」と救助を要請。自衛隊員に母親を背負ってもらい、橋が崩落した谷川に丸太を渡すなどして集会所にたどり着いた。「自宅に夫が残っているので、二次災害が起きないか心配」とうつむいた。

 上流に比べ携帯電話の電波が届きやすい天然ダムの周辺には、電話を持った数人の住民がいた。坂辻和久さん(53)=会社員=は停電の間、車で携帯を充電していたため、ガソリンの残量が少なくなり、不安を募らせていた。「安全や天気、道路などの情報が欲しい。早く道路を復旧させてほしい」

 20人ほどが避難している集会所では、自衛隊員がパンや水などの食料を支給していた。「トイレットペーパーなどの日用品を買いに行きたいが・・・」。和田ゆかりさん(44)=パート従業員=はため息をつき、「子ども2人が学校に行けるのはいつになるのか」と、不安そうな表情を見せた。(徳島新聞=岡山愛子、乾栄里子)