徳島新聞社は12日、徳島市の阿波踊りを安定的に運営し、未来に向けて発展させることを目的に3億円を寄付し、これを原資とする「阿波踊り振興基金」(仮称)を創設することを市に提案した。阿波踊り事業に4億円余りの累積赤字が発生していることへの道義的責任を取るためで、市は提案を受け入れる方針。
基金は、阿波踊りが台風などで開催中止になった際のチケット代払い戻しや、桟敷改修などの出費に備えるほか、阿波踊り情報の発信、インバウンド(訪日外国人旅行者)誘致の推進などに役立ててもらう。
米田豊彦社長が市役所を訪れ、遠藤彰良市長に提案書を渡した。遠藤市長は会談後、「提案内容をしっかり検討して、基金をどう活用させていただくか決めたい」と話した。
米田社長はこの後、徳島市の本社で記者会見し、寄付金3億円の額の根拠について「阿波踊りを1回開催するには2億8千万円から3億円近くの運営費がかかり、その額を目安にした」と説明。運営に際しての赤字回避のための基金であって、累積赤字解消のためではないことを強調した。
市は今夏の阿波踊り開催について、今月下旬に新たな実行委員会を立ち上げる方針。遠藤市長は、徳島新聞社の今後の関わりについて「阿波踊り事業に長年携わっており、経験と知識がある。それらを今年の阿波踊りに生かさせていただきたい」と話し、どういった形で事業に加わるかについて早急に検討する考えを示した。
<米田社長会見一問一答>
―徳島市観光協会の阿波おどり事業特別会計に生じた4億円余りの累積赤字について、主催者としてどう認識しているか。
赤字を賠償する法的責任は弊社にないが、詳細な決算開示を求めてこなかったことなど共催者として道義的責任はある。主催者の責任の取り方として、阿波踊りの未来のために3億円の寄付と基金の創設を市に申し入れた。
―阿波おどり会館の指定管理者が観光協会から徳島新聞社などでつくる共同事業体に代わった。協会は「兵糧攻めだ」と主張している。
指定管理業務は、新聞社のノウハウを生かして収益を上げることができる事業だと考えており、阿南市や阿波市の施設でも管理を受託している。指定管理業務の推進は経営方針の一つで、阿波おどり会館の管理受託は阿波踊りの一連の問題とは関係ない。
―累積赤字に道義的責任を感じているというなら、今後の踊り運営に関わることも疑問に思う。運営から手を引く考えはないか。
われわれの責任の取り方とは、阿波踊りをきっちり運営することであり、運営に支障を来すようであれば何も責任を果たしたことにならない。今の状況でわれわれが手を引けば本当に運営できるのか疑問でもある。演舞場の運営など長年培ったノウハウがあり、市からノウハウを使いたいという要請があれば、どんな協力もしたい。