誠に心外だが、四国に3本も橋が必要か、という主張がある。そう思わないでもないけれど、3ルートの先駆けとなった瀬戸大橋開通から30年、今や3本とも住人には欠かせないインフラとなっている

 記憶もおぼろげになったものの、以前はどうだったか。いざ台風で船便が欠航すれば「孤島四国」。荒天時は橋も通行止めになるので変わりがない、といえばないのだが、隔絶感にはかなりの違いがある

 JR瀬戸大橋線の利用者は開業から延べ約2億6千万人。車両の通行台数も2009年に導入された高速道路料金の大幅割引を機に急増し、累計1億7千万台を突破した

 3ルートの整備により、本四間の交流人口は約6千万人と、1987年度の2倍近くに増えた。ただ、建設にかかった債務の返済は橋の料金収入だけでは困難な状況だ。老朽化が進み修理費も膨らんでいる

 徳島県西部の山あいの集落で、こんなやりとりをしたことがある。「いい道ができていますね」。「便利になるとな、いつでも帰れるからと、里に下りる人が増えるんじゃ。引っ越しのための道じゃな」

 次は新幹線を、と四国側は勢い込むが、本四架橋は人材や富が吸い上げられるルートでもあった。30年といえば一世代である。「いい道」を当たり前のインフラとして十分活用してきたか、いま一度考えたい。