12日午後0時5分ごろ、鳴門市鳴門町土佐泊浦の県道(鳴門スカイライン)で、板野町吹田の会社員岸本浩貴さん(25)運転の乗用車と、鳴門市大麻町萩原の会社員古城孝浩さん(51)運転の中型トラックが正面衝突し、炎上した。岸本さんが右大腿(だいたい)骨を骨折、古城さんが胸骨と肋骨(ろっこつ)を折ったほか、乗用車の同乗男性(24)も軽いけがを負った。

 鳴門署によると、現場は片側1車線で、見通しの悪いカーブ。岸本さんの車が走行車線、古城さんのトラックも同じ車線で炎上しており、署が原因を調べている。

 現場を車で通り掛かったK―1ジム北斗会館(川崎市)の代表で、K―1選手の小宮山工介さん(30)=東京都=と運転手の男性(35)=神奈川県=が、乗用車の同乗男性と協力し、岸本さんを救出。さらに小宮山さんがトラックの助手席側の窓を右肘で割り、古城さんが自力で脱出するのを手伝った。救助の際、小宮山さんは右肘を出血するけがを負った。

 消火活動には鳴門市消防本部の消防車など9台が出動し、約40分後に消し止めた。現場周辺は約1時間、全面通行止めとなった。

 小宮山工介さんは立ち技系総合格闘技のK―1で活躍しており、仕事で来県中だった。車両炎上の危険が迫る中での救出劇に「いつ爆発するか分からない恐怖はあったが、人を助けたい一心で夢中だった。右肘を使ったのはとっさの判断だった」と話した。

 小宮山さんは乗用車とトラックが衝突し、火と煙が上がっているのを発見。乗用車の後部ドアを開けて、運転席にいた重傷の岸本浩貴さんを引きずり出した。さらにトラックの古城孝浩さんが「鍵が開かない」と叫んでいるのに気付き、「ちょっと離れて」と声を掛けてから右肘でガラスを割り、脱出を手助けした。その直後、乗用車は炎上し、引火したトラックも燃え上がったという。

 半袖だったため右肘にはガラスが刺さり、鳴門病院で約10針を縫った小宮山さん。「子どもの頃から格闘技をやってきたことが、人を救うことに役立ってよかった」と話した。