4季目のシーズンを迎えたサッカーJ2徳島ヴォルティスのリカルド・ロドリゲス監督。試合では厳しい表情でげきを飛ばす「闘将」のイメージが強いが、練習場などでは選手と笑顔で交流する姿をよく目にする。徳島での暮らしぶりや好きな音楽、これまでの経歴など、日頃はなかなか聞けない「リカ将」の素顔を根掘り葉掘り聞いてみた。 

 

 ーサッカーを始めた年齢ときっかけは。

 8歳の頃です。小学校の友達とよくサッカーで遊んでいて、それがきっかけで地元の「オビエド」というチームに加入し、本格的にサッカーの道へ進みました。

 ー指導者の道に進んだきっかけは。

 母国スペインのユースチームでプレーしていた17歳の時、試合中に左膝十字靱帯(じんたい)を断裂してしまう大けがを負いました。それを機に、コーチや指導者への転身を決め、ユースチームのアシスタントコーチから指導者としての道がスタートしました。その過程で地元オビエド大でスポーツ科学を専攻し、博士号も取得しました。その後、UEFAプロライセンスという指導者資格も取りました。

 ー17歳であれば、サッカーから離れた人生を歩むこともできたのでは。

 約1年間サッカーから離れ、別のことをしていた時期もありましたが、その生活はあまり楽しくありませんでした。結局、自分が好きなのはスポーツだと気付き、周りの人たちのサポートもあってサッカーの指導者としての人生を歩んでいます。

 1998年からスペインのクラブチームのコーチなどを歴任。海外での指導経験が豊富で、2013年のサウジアラビアU―17(17歳以下)代表を皮切りに、スペインやタイの計3チームで監督を務め、ヴォルティスに就任する前年の16年3~6月はタイのクラブチームを指揮した。

 

 ー世界各地に赴き指導者として活躍してきたが、新天地に行く際に不安は。

 文化や宗教など国によって大きな違いはありますが、そういったことも含めて大きな経験になると思い、不安よりも挑戦したい気持ちが勝っていました。

 ーこれまで多くのチームを渡り歩いてきたが、チームを選ぶ上で大事なポイントは。

 国によってレベルや違いはありますが、自分自身も成長できる環境かどうかを大事にしてきました。「今、自分がしていることに満足しているか」と常々考えることも重要です。もちろん、私の家族が快適に生活できているか、幸せに暮らしているかも大事なポイントです。

 ー家族も一緒に世界を回っている。

 サウジアラビアやタイなど、文化や宗教が違う国で家族が一緒に生活するのは難しいと思っていましたが、どんな時でも家族がサポートしてくれました。本当に妻と息子には感謝しています。

 17年、豊富な育成・指導経験を買われてヴォルティスの監督に就任。クラブ側は当時、ロドリゲス監督の人脈が将来のクラブ強化につながると判断。交渉の過程では、チームが進めてきたアグレッシブで組織的なサッカーを進化させることも条件として提示した。

 

 ー徳島ヴォルティスの監督を引き受けた理由は。

 当時、タイで監督をしていましたが、タイや中国のクラブからもオファーがありました。しかし、Jリーグのレベルはアジアでトップクラスだと思っていたので、そこに挑戦できるのは魅力的な話でした。Jリーグの試合は当時からチェックしており、日本で挑戦するのは自分にとって良い経験になると思いました。

 ー海外で指導している時から、日本やJリーグに関心があった?

 タイで監督をしていた時に日本でトレーニングキャンプを行うこともあり、日本のことは近くに感じていました。ちょうどその時、日本で挑戦することも良い選択肢だと考えていました。

 ー常々心掛けていることや人生の指針といったものは。

 監督としては、自分が成長していくこともそうですが、選手たちの成長をいろいろな面からサポートしていきたいと思っています。個人的には、常に自分がやっていることに満足できるように、最大限できることを尽くしていきたいです。場所によってやることは変わるかもしれませんが、自分が一番幸せを感じられるようにやっていきたいです。

 ー徳島で暮らし始めて約3年ですが、徳島の印象は。

 バンコクにいた頃は、すごい渋滞に巻き込まれてなかなか移動できないなど、日々ストレスを感じる生活でした。徳島では快適に移動できますし、オビエドのような閑静さもあるのでとても気に入っています。スポーツをすることも好きなので、自然に囲まれた環境はとてもいいですね。ただ仕事上、ある程度の休みをとって徳島を満喫することなどは難しいです。

 ー試合に臨む時に聴く音楽や普段から聴いている音楽は。

 試合の前に音楽を聴くことはありません。普段はアイルランドのバンド「U2」や、英ロックバンド「クイーン」など、最近のバンドよりは古いバンドをよく聞いています。

 ー休みの日の過ごし方は。

 ランニングやサイクリング、スイミングなど私自身のトレーニングに充てています。もちろん、食事など家族と一緒に過ごす時間もありますが、完全にフリーな日はありません。リーグ中であれば、次の対戦相手を研究して、すぐに練習に生かす必要があります。休みの日といっても1日の半分は仕事ですね。

 ー休みの日でもタイトなスケジュールで大変では?

 相手を研究する時間は、私の中で非常に大事な時間だと思っています。効果的な練習をする上で必要ですし、相手チームのことを知っておかないと手遅れになることもあります。正確な情報を1日目の全体練習の時には用意していなければいけません。

 

 ーもしサッカーの監督になっていなかったら。

 心理学を生かした仕事だと思います。具体的にはコーチングや、リーダーシップを教えるようなことですかね。

 ー好きな(憧れの)監督は。

 マンチェスター・シティー(イングランド)のグアルディオラ監督やアルゼンチンやチリの代表監督などを歴任したビエルサ監督、こちらもアルゼンチンを率いたこともあるサンパオリ監督です。

 ーその理由は。

 彼らの率いるチームのパフォーマンスや、彼ら自身が持っている哲学が大好きです。攻撃を第一に考えて、ボールを持っていない時には、前からボールを奪いに行って、試合を支配しようとする。そして一番大事なのは、サポーターや観客に楽しんでもらえるサッカーを実践しているところです。選手の成長を促し、観客も楽しめる最高のサッカーだと思います。

 ー過去に対戦した中で衝撃を受けた監督やチームは。

 すぐに思い浮かべることはできませんが、自分たちがしたいサッカーをさせずに、消してくるチームです。試合中でも、こちらの様子を見てすぐに修正するなどして厄介です。

 ーJ2チームの中で意識しているチームは。

 対戦していないチームが多く、今季については何も言えません。昨季は京都や横浜FC、柏レイソルが、監督が変わった中でもチームの戦術がしっかりとしていて印象に残っています。その中でも京都は一昨年と比べ、とても変化していてとても驚きました。

 ー開幕戦では新加入の7人がスタメンなどチームとして大きな変化が見られた。

 選手全員がすごく良いパフォーマンスで、プレシーズンや練習でもいい動きをしていたので、どのメンバーで戦うか非常に難しい判断でした。7人の新加入メンバーを投入したというよりは、あの時はあのメンバーが良かっただけで、選手自体に優劣があるわけではない。他の選手が出たとしても良い試合をできたと思います。

 ー戦術が浸透している昨季からのメンバーを積極的に起用するという考え方は。

 プレシーズンの時はそう考えていました。「新加入の選手を大量に投入するよりは」と。しかし、練習が進んでいくに連れて、昨季のチームにはない部分を感じて、そこを生かすのも面白いと考えました。開幕戦はまさに、昨季やってきた戦術と新加入の選手がうまく融合した結果です。しかし、大事なのは毎週一番良い状態のメンバーで試合に臨むことです。

 

 ーサポーターの皆さんに、今季のチームの見どころを挙げてください。

 できるだけ長い時間をかけて攻撃し、試合全体を通しても支配をしていきたいです。選手が替わっても、その部分は変わりません。そしてどの選手が出ても皆さんが求めている結果を残していきます。