徳島市出身で東京大学法学部4年の内藤佐和子さん(25)=東京都品川区在住=の自伝「難病東大生-できないなんて、言わないで」(46判、192ページ)が、サンマーク出版(東京)から出版された。難病の多発性硬化症にかかった自らの境遇を好機ととらえ、不安を抱えながらも学外活動の取り組みなどを通じて前向きに生きる姿がつづられている。
内藤さんは2004年8月、突然めまいなどの症状を訴え、東大病院で多発性硬化症と診断された。弁護士を目指し、入学して4カ月後のこと。ストレスで病状が悪化するため、主治医は弁護士の夢をあきらめるよう諭した。
内藤さんは「治療法がない病に直面した不安や夢が遠のいた絶望で、涙が止まらなかった」と振り返る。
「難病東大生-」では、「難病だからできないという思い込みの壁を取り払うことで、新しいことにチャレンジできるようになった」と繰り返し書いている。
その一つが学外での活動。仲間の学生と参加したNPO法人主催のビジネスプランコンテストでは、おもちゃのレンタル事業を提案し、優勝した。地元の活性化を支援する目的で県に徳島活性化コンテストを働き掛けて実現させた。
現在は、病気の研究資金を得るため、インターネットの検索サイトを使って募金を集めるシステム開発にも取り組む。「病気だからこそ何かをやり遂げたい」「病気が治るために、自分にもできることが必ずあるはず」との思いが、内藤さんを後押ししたという。
内藤さんは昨年11月、学生が企画した本のコンテスト「出版甲子園」に出場。自らの病気や学生生活をテーマに発表し、3位に選ばれた。受賞をきっかけに出版社から自伝執筆の申し入れがあり、出版が実現した。
内藤さんは「難病への偏見やネガティブなイメージを変えることができれば。誰でも病気になる可能性があり、病気でも頑張れることを知ってほしい」と話している。
「難病東大生-」は1400円(税別)。全国の書店で販売している。
《多発性硬化症》脳や脊髄(せきずい)の神経線維を包む髄鞘(ずいしょう)が壊れ、神経がうまく伝達されなくなり、運動や感覚、視力などに障害が起こる病気。全国の患者数は約1万2千人とされる。根本的な治療法はまだ発見されておらず、厚生労働省の特定疾患(難病)に指定されている。