城南高ではラグビー部に所属。28歳まで社会人チームで活躍し、東四国国体(1993年)に出場

世代を超えて乗り継げる自転車を作りたい

RINDOW BIKE STORE・佐光寿吉さん(50・勝浦町出身)

 シンプルでクラシカルなフォルムが存在感を放つ。徳島発の自転車ブランド「RINDOW」(リンドウ)は、「用の美」を体現するかのような佇まいだ。ブランドの拠点は徳島市にある自転車店「RINDOW BIKE STORE」。店主の佐光寿吉さんが企画やデザインを手がける。

 「輪の道という意味を込めてリンドウ。自転車としてあるべき姿はこうなんじゃないか、っていうのを表現したいと思ったんです。作りたいのは、時代に左右されず長く愛用される自転車。ヨーロッパなんかでは親が乗ってた自転車を子どもが引き継いで使うことも珍しくない。メンテナンスやカスタマイズしながら世代をまたいで乗り継ぐ。日本でもそんな文化が根づいたらいいなと思うんです」。佐光さんの想いを形にしたRINDOWが誕生したのは2012年。それからわずか8年で国内の取扱店は300を超える。

かつて徳島市八万町にあった「CYCLE SHOP SAKOH(サイクルショップ サコー)」

 1921年に祖父が勝浦町で自転車店を創業。跡を継いだ父が徳島市八万町に店を移してからは「CYCLE SHOP SAKOH」として親しまれてきた。子どもの頃は「やるつもりはなかった」と言う佐光さんがこの道を選んだのは18歳のとき。父と一緒に店を切り盛りしていた母の病気がきっかけだった。高校卒業後、自転車店の後継者育成を目的に設立された「ブリヂストン サイクルマネージメントスクール」(埼玉県)に入校。このとき、初めて地元を離れた佐光さんは衝撃を受けた。「ん、なんかちゃうぞ!? 徳島のほうが自転車がオシャレでないか!って。当時、徳島の高校生が乗るんは籐のカゴで革のサドル、色もとりどりでオリジナリティに溢れとった。ファッションの一部でしたからね。それは県内の自転車店が工夫された結果だと思うんですけど、徳島独自の自転車文化に誇りを持ったんです」。

 半年間スクールでイロハを学び、19歳で家業に入った。修理やメンテナンス、日々の業務に向き合い経験を積み上げる日々。その一方で、自転車を取り巻く環境は変わりつつあった。関西が中心だった生産拠点が少しずつ中国へ移行し、安価な自転車が主流に。「オシャレなアイテムから日常の足だけのものになった。それでも自分は、かわいい自転車への意識が強くて。店に置いておけばお客さんは買ってくれると信じてましたね」。時代に迎合せずブレない姿勢で営業を続け、自ら課した売上目標を達成したのが29歳。「ご褒美にアメリカの西海岸に行ったんです。憧れだったアメリカンカルチャーに触れて、いろんな刺激を受けました。このとき、いつか海外を行き来できる仕事がしたいと思ったんです」。

 とはいえ「何かしたいけど、何からやったらいいかわからんで悶々しとった」。そんなとき偶然知り合ったアパレル会社の社長に「ペットブームだから、犬を乗せて散歩できる自転車を作ったら?」と言われ「いっちょやったるかってなったんですよ」。佐光さんが考案したのは、ハンドルとサドルの間に帆布バッグを装着し、そこに愛犬を乗せる「DOG BICYCLE」。大阪府堺市の製造メーカーに企画を持ち込み、1年半かけてテスト号を完成させた。2002年に東京のギフトショーに出展すると、評判は上々。下北沢のペットショップからは2台の注文が入った。「でも課題が山ほどあって。量産するとなると日本ではパーツが手に入らない。中国なら入手できるとわかって、向こうで作ることにしたんです。注文くれた2台のために腹くくった(笑)」。商品化した「DOG BICYCLE」はデザインやコンセプトが高く評価され、2005年にGOOD DESIGN賞を受賞。ネット販売を開始すると、少しずつ認知されるようになった。

2013年にオープンした「RINDOW BIKE STORE」

 製造工程のチェックのため中国へ通い、高級自転車の生産が盛んな台湾の工場もたびたび訪れた三十代。生産ノウハウを蓄積し四十代に入ると、自分が考え続けてきた自転車を作るべく「RINDOW」を立ち上げた。縁あってつながった台湾のメーカーが佐光さんの企画を実現してくれることになった。無駄を省いたボディにこだわり、イタリア製のグリップやクラシックなベルなどパーツ類も細部まで吟味。素材には錆びにくいアルミやステンレスを多用することで長く乗れるフラグシップモデルが完成した。2013年にはショールーム「RINDOW BIKE STORE」をオープンし販売をスタートさせた。

「BULLET LIGHTINGライト」(5000円)。フロントにもリアにも取りつけできる

 自転車だけでなく、グリップやペダルなどオプションパーツも企画開発している。大ヒットとなったのが2015年に発売したLEDの充電式ライト。アルミを削り出して成形するスタイリッシュなデザインで、2016年に台湾で行われた自転車産業の国際見本市「台北サイクルショー」ではアメリカやイギリスなど5カ国のバイヤーから注文を受けた。「海外で発表するのは自信があったんです。RINDOWに合うライトがなかったので作ったんですけど、シンプルで主張しすぎないから取りつける自転車を選ばない。このライトが足がかりとなって、ドイツやイタリア、フランスなどヨーロッパ各地に代理店ができました」。日本では初回販売した250個があっという間に完売。現在も国内外で安定した売れ行きを誇る。「次は子ども用の自転車を作ろうと思ってます。山あり谷あり、ほんでまた谷ありですけどね」。切り開く輪の道は凸凹あれど、前進するのみだ。

住所=徳島市末広2-1-84 営業時間=11時~19時
定休日=水曜休
駐車場=あり
問い合わせ=088-678-6781