どの国の指導者も知らないはずはない。わが身に代えても守らなければならないもの、それは市民の命にほかならない
シリア内戦を巡る構図。中央に座るアサド大統領を挟んで、ロシアのプーチン大統領が手を差し伸べている。片や米国のトランプ大統領が攻撃の機会をうかがっていた
7日、アサド政権は反体制派の抵抗が根強い首都ダマスカス近郊の東グータ地区ドゥーマを空爆した。化学兵器によるとみられる症状で多くの人が窒息死したという。幼子が人工呼吸器を口に当てている姿には胸が痛んだ
市民の命を奪う化学兵器、その使用を阻止する。トランプ氏が命令したのは、報復攻撃だった。攻撃は新たな攻撃を生む。招くものは、米ロ対立の先鋭化だろう。シリアの内戦は混迷の度を深めよう
この1週間余りの写真を見ながら、ふと思う。呼吸器を当てた子どもは今、治療を待つ少女はどうか、母親に抱かれた赤ん坊は・・・。ミサイルと思われる飛行音、地響きを伴う爆発音をどれほど聞けば、平穏が得られるのか
祖国で生まれ、祖国で働いて、祖国で静かに家族と、というごく当たり前の暮らしができていない。1枚の写真がある。東グータ地区から北部アレッポに向かうバスの割れた窓から、外を見る子どもたちの姿を撮ったものだ。彼らの目に、祖国はどう映っているか。