やましなの「フォロのドレッシング(レギュラー)」。月産12万本を超えるロングセラー商品となっている

材料が均等に混ざるよう手作業でかくはんするやましなの従業員=藍住町の同社

調味料メーカー「やましな」(藍住町) フォロのドレッシング

 発売から30年以上、国産材料と無添加にこだわり、「手作りの味」を守る。営業をかけず口コミで全国に浸透。生協や百貨店などに月12万本以上出荷し、年4億円近くを売り上げる。

 すりおろしたタマネギとニンニクに、しょうゆやオイル、酢、スパイスを合わせて作る。商品は、販売の約9割を占める「レギュラー」をはじめ、ニンジンを使った「セノーラ」、県産ユズで仕上げた「ゆず」など5種類。とろりとしたドレッシングは、サラダにかけると、濃厚な味わいと深い香りが立ち上る。

 「加熱をせずに生野菜の風味を生かしている。発売当時はあまりなかった和風のテイストも受け入れられたのではないか」と藤野雅弘会長(68)は話す。

 1983年に徳島そごう(現・そごう徳島店)に開業したイタリア料理店「フォロ・ロマーナ」で評判になったドレッシングで、オーナーだった藤野会長が86年2月、吉野川市に工場を設けて製造を始めた。

 販路拡大には口コミの効果が大きかった。人員に余裕がないため量販店などへの売り込みはせず、当初は自分の店だけで販売していた。料理雑誌に取り上げられたのがきっかけで注目され、県外の大手食材店などに出荷を開始。買った人が周囲に勧めるなどしてファンが増え、出荷先も広がった。藤野会長の長女の藤野亜希子社長(40)は「身近な人の紹介や自分で選んで良かったという成功体験が固定ファンを生むのだと思う。最近は会員制交流サイトの口コミも追い風になっている」。

 一方で、人気の味を再現したといっても、量販店などに流通させるには壁があった。ネックとなったのが2カ月の賞味期限。非加熱で添加物を使っていないだけに、一般的なドレッシングと比べて短い。

 藤野社長は「商品の中身を変えずに、その力を信じて続けてきたのが良かった」と言う。賞味期限の短さは、在庫を持たない受注生産で対応した。注文にこまめに応じて少量でも製造できる中小企業だからこそ可能だった。

 現在は藍住町に工場を構える。従業員は17人。需要は増えているものの、今以上に生産量を増やすつもりはないという。藤野社長は「従業員の経験と勘に頼って作っている部分があるので、大量生産をすれば良さがなくなってしまう。それよりも、地元農産物を使った種類を追加するなど、もっと地域に貢献したい」と語った。

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 県内の企業には多くの人や業界に支持されている商品やサービスがある。どのような発想やコンセプトで生まれたのか。どうやって広く浸透させたのか。開発者や経営者に思いを聞き、ヒットの裏側を探る。