新型コロナウイルスは徳島の夏の風物詩も奪った。21日に中止が決まった徳島市の阿波踊り。踊り連や県民らは残念がりながらも、「妥当な判断」と理解を示した。地域経済が悪化する中、観光需要を期待していた飲食店や宿泊業の関係者らは複雑な表情を浮かべた。

残念だが終息へ協力

 【踊り子・県民】「予想していたとはいえ、やっぱり寂しい」。連員230人を率いる蜂須賀連の岡本慎治連長(55)は、喪失感を口にする。県内外で予定していた公演は2月下旬から全てキャンセルに。練習もできず、新人も迎えられない状態が続く。「何もかも止まってしまった。連員の士気が下がらないよう、連絡を取り合いたい」と話した。

 ちびっ子で最後の夏を満喫するはずだった小学6年生男児は「休校が続いて友達とも遊べていない。その分、8月には思い切り踊りたかったのに。来年以降は楽しめるよう、中学でも続ける」と前を向いた。

 和歌山市出身で、友人との見物を毎年楽しんでいた徳島大4年生の女性(22)は「踊りが見られなくなって残念。でも、今はリスクを冒してまでするべきでない」。

 徳島市の無職の男性(76)は「人が集まる所は危ない。早く感染を終息させるために県民が協力し合わないと」と訴えた。

「店が持つか」不安も

 【飲食店・宿泊業者】徳島市両国橋などの繁華街で飲食店3店を営む男性(41)は「到底無理だと諦めてはいたけれど、中止の決定は正直言ってショック。でも、感染拡大を防ぐには仕方ない」と現実を受け止めた。3店とも19日から休業しており、「踊りで盛り返す淡い期待もあった。次の書き入れ時の年末まで店が持つか」と不安も口にした。

 「県外の有名な祭りも相次いで中止になっているので、やむを得ない」。徳島市旅館組合理事長で、徳島グランドホテル偕楽園の住友武秀社長はそう話す。宿泊キャンセルが相次いで休業に近い状態が続く中、踊り期間中は延べ約600人が予約していた。住友社長は「何も考えられないというのが本音。いつまで耐えなければいけないのか」と嘆いた。

 踊り見物を主な目的にした団体ツアーを催行する旅行業クラブツーリズム(東京)では、満席に近いツアーもあった。担当者は「夏の売り上げを支えてもらっていたので残念だ」と話した。