2013年7月の三好市長選で退職手当の全額カットを公約に掲げて初当選し、今月の市長選で再選を果たした黒川征一市長(70)が、8月中旬にも1期目の退職手当約1750万円を受け取ることになった。市長は徳島新聞の取材に対し、支払いの共同処理をしている一部事務組合に条例改正を申し出たが認められなかったことを理由に挙げ「いったん受け取る」と述べた。支払われた後に返納すると公選法で禁止されている寄付に当たる恐れがあるが、市長は今後どう対処するかは明言を避けている。市民からは「公約破りだ」と批判の声が上がっている。

 総務省公務員課給与能率推進室によると、市町村の首長が退職手当を受け取った後に返納すると公選法が禁止する政治家の寄付とみなされる可能性がある。このため、退職手当を受け取らない方法としては、手当をゼロに近い金額にするよう条例改正するのが一般的だという。

 県内では徳島、鳴門、小松島各市を除く21市町村が一部事務組合の県市町村総合事務組合をつくり、首長の退職手当を支払っている。組合の条例には返納の規定がないため、黒川市長の退職手当をカットするには、組合の条例を改正するか、退職手当算定の基となる市長給与を削減する条例を三好市が単独で設ける必要があった。

 県市町村総合事務組合によると、黒川市長は14年1月に開かれた組合の業務運営研究委員会で組合の条例改正を提案したが、出席した他の委員10人が反対した。黒川市長は市単独での条例制定の意思があることも伝えたが、他の委員から「共同処理の趣旨から市町村が個別に行うのは好ましくない」とされ、断念したという。

 黒川市長は取材に対し「法律の許す範囲内で適切に処理する。約束したことは必ず守る」としているが、具体的な方法は示していない。2期目の退職手当については「公約に掲げていない」と述べた。

 有権者の一人は、市長が旧池田町職員や県議として長年、地方行政に関わってきたことに触れ「行政に詳しいのだから、返納が難しいのは分かっていたはず。選挙で人気取りに利用したとしか思えない」と批判している。