国土交通省は2018年度に、早明浦ダム(高知県)の治水能力を向上させる再生事業に着手する方針を26日発表した。18年度予算の概算要求に事業費を盛り込む。大型台風などに備え、ダムの水を放流する設備を新設する計画で、徳島県を流れる吉野川で浸水被害の軽減が期待される。09年に四国地方整備局が試案を発表し、徳島県などの慎重論や同年の政権交代の影響で難航していた事業が動き出す。
国交省の方針が決まったことを受け、地整局は再生事業の詳細を公表した。計画ではダムの堰堤(えんてい)などに排水設備を造る。約400億円の事業費が見込まれている。
この新設備により、ダムの水位を今以上に下げることができるようになり、洪水調節容量が1700万立方メートル増える。その分は、利水容量を700万立方メートル減らし、発電専用容量を1000万立方メートル使うことで調整する。
利水容量が減ることになるが、農業用水の利水時期をやりくりすることで、現状の水需要に悪影響が出ないようにする。
これまで同事業は再編事業と呼ばれてきたが、国交省は概算要求する他の事業と合わせ再生事業と呼ぶことにした。
これらの内容は、地整局が6月に公表した吉野川水系河川整備計画の変更原案の一部修正としてインターネット上で公表している。
早明浦ダム再生事業は四国4県の治水・利水を巡る意見に隔たりがあり、計画は進んでいなかった。地整局が今年6月に、徳島県が要求していた吉野川上流の築堤時期を河川整備計画変更原案に明記したことを機に動き出した。