新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、徳島県内でも県民の暮らしや経済活動など、さまざまな分野に影響が広がっている。どんな課題が今、顕在化し、この状況にどう対応すべきなのか。政府などの状況判断に問題はないのか。前線に立つ人に話を聞いた。

学習の機会を柔軟に創出

教育研究家・妹尾昌俊さん(本人提供)

 休校中に学校と教育委員会ができることについては、いろいろな選択肢がある。熊本市や横浜市では地元の放送局とタイアップして授業をテレビ放映している。インターネット上の授業動画の配信の場合、パソコンやネット環境が整っている家庭、そうではない家庭があり、学校などのパソコンや携帯データ通信の「ポケットWi―Fi(ワイファイ)」を貸し出すのも一つの方法だ。

 徳島のようにまだ感染者が少ない状況では、分散登校も考えられる。例えば、1年生だけの日、2年生だけの日を設ける。さらに空き教室に分かれると、いつもは1クラス当たり40人近くいる場合も、10人ぐらいの学習環境ができる。オンラインだけにこだわらず、オフラインを組み合わせて進めてはどうか。

 今、ともすれば「なぜもっと教師がオンライン授業をやらないのか」とばかり報道されていて心配だ。先生たちがやらなくても、既にNPO法人や企業でいろんな動画の教材がある。先生たちは自前ばかりにこだわらずに、既存サービスを活用するという発想があっていい。

 また、動画教材や宿題を課すだけではなく、子どもたちが好奇心を高め、学びを継続できるかどうかが大切だ。ドリルや問題集ばかりでは、しんどいだろう。子どもたちのモチベーションを上げたり、フィードバックしたりすることが先生の役割として重要だ。これは信頼のおける先生から言われた方が効果的だが、年度初めが休校のため、子どもとの信頼関係が築けていない。何らかの形で関係性をつくっていく努力が必要になる。

 まずは、子どもと先生とのつながりをつくることに時間とエネルギーを割いた方がいい。分散登校ができるところはした方がいいし、インターネット環境があれば、「朝の会」や面談の方を授業配信よりも優先すべきだろう。少しでも顔を見れば安心できる。

 ネット環境のない家庭などには電話をしたり、家庭訪問をしたりして組み合わせればいい。全員が同じでなければ駄目という発想だと前には進まない。

 熊本市や横浜市の民放の授業も、別に文部科学省がそれをやれといってやっているわけではない。国の通知や動きを待つ姿勢ではなく、各教育委員会と学校は、できる範囲のことを主体的にやっていくべきだ。

 小さな自治体だと教育委員会の人数も少なく、なかなかそこまで手が回らないかもしれない。しかし、岐阜県白川村のように、過疎地でも機能的に動いている自治体もある。「Zoom(ズーム)」というビデオ会議用のアプリを使って朝の会や授業をオンラインでやっているし、Wi―Fiがない家庭には貸し出している。できる範囲で、できることを考えていくべきだ。徳島では、全県で連携して授業がうまい先生が集まり、ケーブルテレビで放映するという手もある。

 また、あまり密接しない形で体育だけやってみてはどうか。体が密着するハードなスポーツは難しいかもしれないが、子どもたちのストレスを発散でき、子ども同士のつながりもできる。もっと体育の先生に声を上げてもらいたい。

 感染症対策は大事だが、怖いからと言って子どもの学習の機会を全部シャットアウトするのは違和感がある。どんなに対策を取っても、感染リスクはゼロにはならない。感染が大きく広がっていない徳島では、他県よりも先進的に取り組める可能性があると思う。

 年度当初からの休校は、受験生への影響も大きい。高校入試は、中学3年間の範囲から出題される。徳島では公立ならば全県統一だし、休校が長引いた場合の特例として高校入試の出題の範囲を狭くするなど、県教委が早めにアナウンスをすればいい。

 徳島は私立学校が少ないため、県教委が方針を出し、私立も含めて呼び掛ければ実現が可能だと思う。もし5月の連休明けに授業が再開できるのなら、多少夏休みを使ってカバーできるだろうが、授業をこなすことが目的化してもいけない。暑い中では子どもたちの学習意欲も上がりにくい。

 問題は大学入試だ。学校によって進め方が違う教科も多数あるから、一概にここまでの範囲とは言いにくいし、全国の広域の話になる。休校しているところ、していないところで不公平や不均衡が生じやすく、浪人生もいる。

 解決策としては、理科などの試験で大問が6問出題されれば、そのうちの4問で回答すれば大丈夫といった選択制の方法が考えられる。それが実現できれば、それほど大きな不公平はないのではないか。おそらく国も対策を検討していると思うが、早めに方針を出してほしい。

 1979年生まれ。阿波市出身、神奈川県逗子市在住。京都大大学院修了。野村総合研究所を経て2016年に独立し、全国各地で学校、教育委員会向けの研修・講演を手掛ける。学校業務改善アドバイザー(文部科学省委嘱)、中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員などを歴任。近著に「教師崩壊」(PHP新書)。