ミステリーには「クローズド・サークル」という用語がある。閉ざされた場所に集まった複数の登場人物が順番に殺され、生き残った者同士が互いに疑心暗鬼となる中で犯人探しを始めるという状況を言う。「アイデンティティー」(03年、ジェームズ・マンゴールド監督、ジョン・キューザック、レイ・リオッタなど出演)は、この設定を巧みに活用した快作だろう。

(c)2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

 暴雨の影響で道路が遮断され、寂れたモーテルで一晩過ごすことになった11人の男女。刑事、女優、娼婦、凶悪犯など、いずれも一癖も二癖もある人物ばかりで何かが起こりそうな予感が漂う。そこで謎の殺人事件が発生し、一人、また一人と無残な死を遂げ、死体も消失していく-。

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 クローズド・サークルは、いかに意外性のあるオチを作り出せるかが肝であり、見る者が最も期待する部分でもある。小説の世界では、既に多くの作家が無数のアイデアを発表しており、今や手詰まり状態にあるものの、本作は映画ならではの視覚トリックを駆使。生身の役者たちが演じるがゆえのリアリティーも相まって、見る者の思考を巧妙にミスリードしてみせる。

 予想外の全貌が明らかになった後も、さらなるどんでん返しが待ち受けているのも一興だろう。序盤から矢継ぎ早に事件が発生してストーリーがテンポ良く展開していき、犯人探しのスリルと緊張感をラストシーンまで満喫できる。(記者A)

 【記者A】映像ソフト専門誌編集者、フリーの映画ライターを経て徳島新聞記者を務める。映画関連記事の編集や執筆、インタビュー、ロケ現場の取材などに長年携わり、1年間で365本鑑賞した年もあるなど、映画をこよなく愛する。

 

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