写真を拡大 藍色の暖簾が揺れる。

 ホシと呼ばれる小さな黒い粒が光る麺。この粒は蕎麦の実を覆う殻が粉砕されたもので、製粉時、殻がついたままの実を挽くと黒い粒となって現れる。昨年9月、石井町にオープンした「手打ちそば まこ」では、玄そば(殻つきの実)を仕入れて自家製粉している。殻つきで製粉した「粗挽き」と、殻をむいてそば粉にした「細挽き」の両方を提供する。「粗挽きはしっかり食べるような食感、細挽きはツルッとした喉越しになるように打っています」と店主の長谷川誠さん。どのメニューも粗挽きか細挽きを選べるのが珍しい。

写真を拡大 粗挽きせいろ(850円)。粗挽きは麺が少し平たい。

 長谷川さんがそばの道へ進もうと考え始めたのは今から5年ほど前。大阪の大学を卒業し、徳島市の飲食店で勤めて10年が経っていた。この先どうすべきか、今後の道を模索していたときに出会ったのが、淡路島のそばの名店「淡路翁」が開くそば打ち教室だった。「こんなんあるんか〜。おもっしょそうやなって軽い感じで参加したんです。そしたら、粉の挽き方や打ち方で全然違うそばになるのが面白くて」と引き込まれていった。仕事の傍ら、月1回の教室に通ううち「そば職人」としての姿を思い描くようになった。

写真を拡大 「開業するまでは練習用に安い粉を買って、自宅で打って打ってしました」と長谷川さん。

 「しばらくいろんな土地のそば屋さんを巡ってみよう」と思い立ち、2016年12月に退職。関東、関西、中四国エリアのお店を食べ歩いた。翌年、本格的にそばの修業をすべく門を叩いたのは、味に惚れ込み通っていた徳島市八万町にある「遊山」だ。「土日だけアルバイトを探していると聞いて、働かせてほしいとお願いしたんです。ゆくゆくは自分の店を出したいことも話すと、初日から出汁の取り方や仕込みの段取りをむちゃくちゃ丁寧に教えてくれました。大将のおかげで勉強することができたんです」。平日は別のアルバイトをして生計を立てながら遊山で学ぶこと約2年。遊山の大将の紹介で、石井町の名店「そば好」さんの引退後のお店を機材ごと貸してもらえることになった。

 「そば好」といえば、徳島のそば通なら知らない人はいない人気店。そこでの営業にプレッシャーはあったが「こんな恵まれた環境はない」と奮起。いろんな人の縁に感謝しながら、2019年7月「手打ちそば まこ」の暖簾を上げた。

写真を拡大 テーブル席と座敷がある店内。

 そばの実は北海道幌加内産で、甘みが強くクセのない「ほろみのり」と、風味と香りのよい「キタワセ」をブレンドしている。つけ汁は、昆布と厚切りの本枯節を煮詰め、すっきりした味わいに。一方、かけ汁はサバ節、宗田鰹、厚削りの節で「ゴクゴク飲めるような味」に仕上げている。「これまで学ばせてもらったことを自分なりにアレンジしています。まだまだ勉強、勉強です」。長谷川さんのそば道は始まったばかり。これからどんな歴史を刻んでいくのか、楽しみだ。

メニュー
・せいろそば(750円)
・鴨南蛮そば(1300円)
・そばがき黒蜜きなこ(500円)

住所:石井町石井字石井1-1
営業時間:11:00〜15:00、17:00〜20:00
定休日:木曜休 駐車場:あり
完全個室:なし    多機能トイレ:なし
座敷席:あり    Wi-Fi:なし
開店:2019年