全国高校サッカー選手権徳島大会で優勝した鳴門高監督

 前回の全国選手権出場は2006年。サドンデスにもつれ込んだPK戦の末、1回戦で敗れた試合後のロッカールームで選手に語り掛けた。「勝たせてやれんでごめんなさい。負けることは恥じゃない。恥なのは負けて立たんこと。ここからが勝負ぞ」。言葉に人柄と哲学がにじみ出る。定年まで2年半。「時代が変わったと言われるけど、鈍感なんかな。今でも選手には泣かせてもらい、感動をもらっている」と話していた闘将が、栄冠に目頭を熱くした。

 夏の雪辱を果たした準々決勝。円陣で反省点を述べた後「負けてもええと思っていた。やるべきことをきちんとやりさえすればな」と選手に伝えた。真意は「サッカーも最後は人間性」。体力的にきつくなったら守備に走らなくなったり、味方のフォローをおろそかにした選手にはたとえ要であっても容赦なく途中交代を命じる。

 熱心な分析家。相手が嫌がるゆえんだ。今回も対戦相手のビデオ映像を空き時間に「たるほど(飽きるほど)みた」。敵のウイークポイントをあぶり出し、自分たちの長所を生かす戦い方を練る。その分析をもとに練習グラウンドでは選手の中に入って声を掛け、考えてプレーすることの大切さや対応を説く。成長には選手自身の気付きが不可欠と言い切る。

 裏表がなく体裁を繕わない素直さを周囲や教え子は慕う。「こんなん言うたら怒られるけど」で始まる話は本音の宝庫だ。決勝2日前、グラウンドから少し離れた校舎への用事に「チャリンコ貸して」と生徒の自転車をこいで往復。「寒い寒い」と言いながら戻ってきた。その道すがらも「どうやって勝たせてやろうか」と考えていたに違いないと思わせるほど、サッカーにひたむきな指揮官を9度目の「国立」が待つ。

※日付・年齢などは2012年11月11日掲載時のもの

徳島新聞社など全国24メディアが協力した、コラボレーション報道「コトバのチカラhttps://powerofwords.jp/)」との連携企画記事