患者や要介護者を抱え上げることが原因で腰痛が職業病化している医療・介護従事者に向け、徳島県医労連は「ノーリフト(持ち上げない看護・介護)」の考えを普及させる取り組みを始める。電動ベッドや福祉器具の活用法を伝え、現場の負担軽減とサービスの質向上につなげる。5日午後1時から県JA会館すだちホール(徳島市北佐古一番町)で初めてのセミナーを開く。
ノーリフトはオーストラリア看護連盟が1998年に提唱。国内では2009年に日本ノーリフト協会(神戸市)が設立された。
セミナーでは、同協会の保田淳子代表理事が、電動ベッドや介助用シート、リフトを使って要介護者らを持ち上げる方法を、実演を交えて紹介する。器具を使うと要介護者らの筋肉の緊張が緩和されることなども示し、双方にメリットがあることを説明する。
厚生労働省の16年度業務上疾病発生状況調査では、医療・介護従事者が腰痛になるケースは全11業種のうち最多の1423件と、全発生件数(4722件)の30%を占めた。県医労連によると▽女性が就くことが多い▽予防意識が十分でない―などが原因で、腰を痛めて離職する人もいる。
ノーリフトは、四国の他県では高知県の取り組みが進んでいる。15年度から特別養護老人ホームや病院など12カ所をモデル施設に指定し、年8カ月間にわたる職員らの研修を通じて効果を上げている。県医労連は今秋に同県への視察ツアーも計画している。
井上純書記長は「力仕事といえば建設業や運輸業を連想するが、医療介護業が多い。ノーリフトは四国では徳島県の取り組みが遅れており、多くの人に理解を深めてほしい」と話している。
5日のセミナーは参加費千円。問い合わせは県医労連<電088(679)9272>。