記録的不漁となっているシラスウナギ漁。関係者は頭を悩ませている=10日午後10時半ごろ、徳島市の吉野川大橋北詰

絶滅危惧種ニホンウナギの稚魚シラスウナギの不漁が、徳島県内で深刻化している。15日に終了した今期の漁の採捕量は、3月末時点で昨期の6分の1以下しかなく、過去最低の水準となる見通しだ。価格も高騰しており、養鰻業者は「赤字続きで、廃業も考えざるを得ない」と頭を痛めている。

県内のシラスウナギの漁期は12月15日から4カ月間。県漁業調整課によると、3月末までの採捕量は67キロで、昨期の417キロを大幅に下回っている。3月後半からやや持ち直してきたものの、年間採捕量が過去10年で最少だった2012年の325キロを下回る可能性が高まっている。

「50年以上続けてきたが、これだけひどいのは記憶にない」。徳島市のある漁協の70代男性はため息をつく。電灯で川面を照らしてもシラスウナギが集まらない日もあり「手ぶらで帰ってばかり。漁に出る気も起きない」と嘆く。

シラスウナギは養鰻業者が買い取っている。不漁に伴い価格が高騰し、昨期は1キロ平均66~67万円だった取引値は150万円にまで上がった。同市の養鰻業者は「高くても仕方なく買っている。このまま事業を続けるべきかどうか悩んでいる」と顔を曇らせる。

シラスウナギの減少により、約40年前は県内に約400軒あった養鰻業者は約20軒まで減っている。環境破壊や乱獲など、資源管理の不備を要因とみる漁業関係者は多い。

国立研究開発法人水産研究・教育機構中央水産研究所によると、シラスウナギはグアム島付近で生まれ、黒潮に乗って東アジアへ回遊する。今期は台湾や中国でも不漁となっていることから、中央水研は稚魚が遅く生まれ、回遊が遅れていると推測。昨秋に採取した幼生のサイズが小さかったこととの因果関係も調べている。