「1人の男性客の方からひどい仕打ちを受けました。もうみんな精神的にズタズタです」「ビクビクしながら仕事しています」。京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」のLINEに、スーパーマーケットに勤務する女性たちから、悲痛な声が相次いで寄せられた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、スーパーでは感染リスクを防ぐ対応をしたり、一部の商品が品薄になったりしている。そうした状況にいらだって怒りをぶつける客がおり、店員が疲弊しているという。詳しい話を聞いた。
「私も悪かったかもしれないですが…」。京都市中京区のスーパーで働いているという伏見区の女性(54)はそう切り出し、レジの担当をしていた日のことを振り返った。
勤務先のスーパーは、飛沫(ひまつ)感染防止のため、従業員と客の間に透明なパネルが立てられている。そのため、客の声が聞き取りにくい。年配の男性客が精算した際、使い捨てのスプーンを付けるよう求めてきた。一度で分からなかったので女性が聞き返したところ、男性客は「こんなんするな」とパネルをなぐりつけたという。「最近はお客さんの目が怖いんです」と女性は声を落とした。
さらに別の日には、セルフレジで購入手続きを誤った客に注意したところ、右ふくらはぎを蹴られたという。女性は近くの交番に被害を届け出た。
ほかにも、紙製品などで1人当たりの個数制限があるにもかかわらず、上限を超えて買おうとする客がいる。そうした客には店員が注意せねばならず、女性はトラブルにならないか気をもむことも多いという。
山科区のスーパーに勤務する中京区の女性(60)は、品薄なハンドソープやキッチンペーパーなどの商品をめぐり、年配客から「なんでいつも品切れなんや」と怒気を含んだ声で詰め寄られた経験がある。
また、店ではレジの順番を待つ際に、一定の間隔を空けて並ぶよう客に求めているが、並んでいると分からず列に割り込む客もいる。客同士の小さないさかいがしばしば起きており、店の雰囲気に暗い影を落としているという。
中京区の女性は「スーパーの店員はみんな疲れている。医療従事者のように、感謝されることはほとんどない。店員はみんな休みたいのが本音じゃないでしょうか」と語る。伏見区の女性も「パートやアルバイトの店員ではすでに辞めた人もいる。私たちはストレス解消の対象ではない。怒鳴ったりしないでほしい」と切実な口調で訴えた。
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