鳴門市沿岸の水門で見つかった国内最大級のヒジキ(右)と通常のヒジキ(県水産研究課提供)

鳴門市沿岸の水門で見つかった国内最大級のヒジキ(右)と通常のヒジキ(県水産研究課提供)

 徳島県鳴門市北灘町の沿岸に国内最大級のヒジキが自生していることが、徳島県水産研究課と瀬戸内海区水産研究所(広島県廿日市市)などの調査で分かった。巨大ヒジキは過去に同じ場所で見つかっているが、初めて専門家の調査で確認された。一定方向に潮の強い流れを受ける特殊な環境が要因とみられ、同課は同様の環境を人工的に造り出すことで、ヒジキの増産につなげられないか研究を進める。

 巨大ヒジキが自生しているのは、北灘町の折野港東側にある県有のクルマエビ中間育成施設。施設は縦60メートル、横80メートルのコンクリート堤防で囲まれており、ヒジキは堤防の水門部に繁茂している。

 水産研究課が7月6日に調査したところ、巨大ヒジキは1株の全長が平均2・2メートルと、通常の倍を超えていた。これまでの国内の報告例では2メートルを超えるものはないという。

 水門部では潮の干満で海水が出入りし、幅が3メートルと狭いため流れが速い。同課では、一定方向の強い潮流が藻体を引き延ばす効果を持ち、成長を促進させていると推測。波がヒジキに直接当たらず、一定の水深が確保されていることも影響していると分析している。

 ヒジキは水門付近の石積み護岸にも自生しているが、全長は平均1・2メートルで巨大ヒジキの半分程度だった。2カ所のヒジキは近接しているため遺伝的に同種と考えられ、生育環境の違いで成長に差が生まれたとみられる。

 巨大ヒジキは、水産研究課の棚田教生研究係長が07年に発見したものの、これまで本格的な調査は行われておらず、17年3月になって同課が瀬戸内海区水産研究所などと共同で調査に乗り出した。

 07年当時の全長は平均3メートルあり、今季はヒジキが不作の傾向にあるため2メートルほどにとどまったとみている。来季以降にさらに大きくなる可能性がある。

 水産研究課は、水門部を全国的に貴重な大型ヒジキの生育地と位置付け、ヒジキが成長しやすい環境条件の解明に向けて共同研究を続ける。

 棚田研究係長は「ヒジキの国内市場は韓国と中国からの輸入が9割を占めている。国産の需要は高いが、生産量は各地で減少しており、今回の研究を増産につなげたい」と話している。