県体操協会が開いた強化講習会では、さまざまな世代の強化指定選手らが一緒に練習に励んでいた=2月、青森山田高校体育館

県体操協会が開いた強化講習会では、さまざまな世代の強化指定選手らが一緒に練習に励んでいた=2月、青森山田高校体育館

 2025年、「あすなろ国体」以来48年ぶりに本県で開かれる第80回国民スポーツ大会(23年以降、国民体育大会から名称変更)。県は17年に県競技力向上対策本部を発足させて選手強化の基盤整備に努めているが、一部競技を除くと国体の本県成績は低迷続きで、昨年の茨城国体の男女総合成績(天皇杯)は45位。本紙フカボリ取材班にも「強化は順調なのでしょうか」と、やや懐疑的な声が寄せられた。対策本部は20年度、選手強化に向けいよいよ本腰を入れる方針だが、思惑通り強化が進むかは未知数だ。

 2月22日、青森市の青森山田高校体育館で、県体操協会主催の強化講習会が開かれていた。25年大会を見据え、ジュニアの強化指定選手12人を含む小学生から高校生までの約40人が種目ごとに練習に励んだ。弘大付属小6年の小島埜和(なお)君は「目標は国体での団体優勝。今回は高校生のうまいところを盗んで帰りたい」と話した。

 同協会は数年前から選手強化に着手。18年度からは25年大会で主力となる世代の強化選手を指定し、国内トップレベルのコーチを招いた講習会を年2回ほど行っている。20年度は講習を増やす方針。講習会には県教育委員会のトップレベルコーチ招聘(しょうへい)事業補助金を活用した。

 対策本部はこれまで将来有望なジュニア選手を発掘する事業や公認指導者資格の取得支援、女性アスリートの競技継続支援を目的とした女性指導者ネットワーク専門委員会の開催など、競技力向上と裾野拡大に力点を置いてきた。20年度は、対策本部が掲げる25年大会での天皇杯獲得に向けた強化事業に約2億7640万円を投じる。

 対策本部は20年度、新型コロナウイルス感染拡大の動向を見極めながら、練習強化拠点となる高校や大学、クラブ、企業などを指定し、支援する体制を整える。また県内の中学・高校を卒業し、県外で生活する大学生や社会人選手に、本県代表の「ふるさと選手」として国体で活躍してもらうよう、一層の人材発掘や支援の充実を図っていく。

 近年の本大会開催地が公開している強化スケジュールをみると、本県の強化施策が極端に遅れているわけではなさそうだ。例えば17年の地元国体で天皇杯2位となった愛媛県は、ジュニアの優秀選手発掘事業を本県と同じ大会開催の8年前から行い、世代を絞った「国体ターゲットエイジ強化事業」は大会の5年前から行っていた。

 ただ、本県の競技団体関係者の一部からは、人口減少や少子化で本県の若年層の競技レベルが他県より低く、「選手強化に着手するのが遅いのでは」との声が上がる。県体操協会の髙谷浩一理事長は「(サッカーやバドミントンなど一部の競技以外は)5年後に向け、高校レベルで強くなっていないといけない時期だと思うが、現状はどうか。県内の高校が全国で上位を目指せるようでないと、有力な中学生が他県に流れかねない」と人材の流出を危惧する。

「課題」高校から県外流出団体競技振るわず

 野球やバドミントン、サッカーなどの競技は県外からジュニアの有力選手が集まる県内高校世代。一方、他競技では有望な中学生が県外の強豪高校に進学し、活躍している例が目立つ。県内競技関係者は「人材の流出」と強い懸念を示しているが、現実として食い止めるのはなかなか難しい。

 アイスホッケー男子の名門・埼玉栄や女子バレーボールの強豪・古川学園(宮城)は2019年度、県出身者が主力として活躍し全国大会で好成績を収めた。青森西高校女子バレーボール部の木村大地監督は「ジュニア世代から『地元で頑張っていこう』という意識付けを地道にしていくことが大切。そして県内の高校が全国で優秀な成績を残すこと。人材流出の解決策はそれしかない」と話す。

 昨年の全国高校総体で県勢は、陸上、レスリング、自転車など個人競技で活躍が目立ったものの、団体で上位に入ったのはバドミントンの男女や剣道女子、新体操男子など一部にとどまった。昨年の茨城国体は得点配分の高い団体競技で点数を稼げず、成績が振るわなかった。団体競技の競技力向上が成績上位を目指す本県の課題と言える。だが、少子化やスポーツの多様化という背景もあり、団体競技の強化は容易ではない。

 県教育委員会や各競技団体の関係者の話を総合すると、強化の進み具合は競技によってばらつきがある。2月11日、県競技力向上対策本部は青森市で強化担当スキルアップ研修会を開き、競技団体関係者を対象に強化戦略プランの策定に関するワークショップを行った。今後、各競技団体にプラン提出を求め、強化を加速させたい考え。

 県教委スポーツ健康課の坂本浩一主任指導主事は「さまざまな強化事業に取り組んではいるが、まだ国体の本大会で成績が上がっていないことは確か。ただ、今年は八戸スケート国体もあり冬季国体は男女総合成績が3位と躍進した。新年度も有力選手等の育成や強化のため、幅広い事業に取り組みたい」と語った。

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