川上憲伸さん

 プロ野球・中日のエースとして活躍し、米大リーグでもプレーした野球解説者の川上憲伸さん(44)=徳島市出身、名古屋市=は、夏の甲子園中止について「自分のことのように残念で、まだ信じたくない」と声を落とした。仲間と共に甲子園を目指した徳島商時代の体験は、後の野球人生の原点であり、誇りでもあった。失意の球児に向けて「今回流した涙は人間を強くしてくれる」とメッセージを贈った。

 国府中3年の夏、甲子園で躍動した徳島商に憧れて進学。1年の夏に遊撃手のレギュラーポジションを獲得したが、甲子園出場の機会はなかなか訪れなかった。エースとして臨むはずだった2年の夏には、徳島大会2週間前の練習で左足首を骨折。ベンチ入りすらできず、チームも初戦負けするという悔しい経験をした。

 高校時代も半分が過ぎ、「諦めたらおしまい」と切羽詰まった気持ちで練習に打ち込んだ。夢の実現を信じ、目いっぱい野球に打ち込める環境をつくってくれた親への感謝の気持ちは今も忘れない。それだけに、今回の中止決定で家族も含めた無念の思いが痛いほど分かるという。「甲子園は家族にとっても夢。それが閉ざされ、どんなに悲しいだろうか」

 「ラストチャンス」だった3年の夏、延長戦や逆転サヨナラといった厳しい試合を乗り越えて、念願の甲子園に出場した。初戦の久慈商(岩手)戦では、終盤に7点差をひっくり返す歴史的な逆転劇で勝利。「人生で一番うれしい瞬間だった」という。

 助け合いながら甲子園を目指し、実現させた仲間との絆は一生の財産となった。明大からプロ野球に進み、米大リーグに行ってからも、性格も何もかも知り尽くした当時のチームメートは心の支えであり続けたという。

 今の高校球児も仲間を大切にしてほしいと願っている。「今後、進学しても就職しても、挫折したり悩んだりといったことがあるだろうが、仲間と共に甲子園を目指した体験がきっと生きてくる」と語り掛けた。