写真を拡大 接客、角打ちスペース。田井良樹さん、田井絵梨子さんと息子の聡一郎くん。

wineshop TAI 田井良樹さん(32・埼玉県出身) 田井絵梨子さん(37・徳島市出身)

 店の場所、ここであっとんかな…。初めて訪れる人はおそらく戸惑うだろう。ビルの1階にあるとはいえ、目立った看板はなく入口はちょっと奥まっている。「TAI」とだけ書かれたアルミドアを開けると、外からは想像できない世界が現れる。ボトルやグラスが並ぶハイテーブルが置かれ、隣室にはワインがずらり。秘密基地さながらのこちらは昨年オープンしたワインショップだ。

写真を拡大 奥に見えるアルミドアがお店の入口。

 「フランス産のナチュラルワインが専門なんです」と店主の田井良樹さん。原料となるブドウの栽培から醸造、熟成に至るまで化学肥料や添加物を極力使わず作られたワインだ。「機械化は難しくほとんどの工程が手作業なんです。自然に作られたからこその優しい風味、体に染み入るような味わいがある。飲み続けても負担の少ないもの、良い酔い方ができるものをセレクトしています」。生産量はごくわずかで日本での流通本数も少ないため、店に並ぶのは珍しい銘柄ばかり。ここでしか手に入らないワインがウリだ。

写真を拡大 「具体的に味の説明をしすぎないようにしてます。自由に感じるものだし、お客さんの初めての感動を大切にしたいんです」。

 良樹さんとワインの出会いは東京で過ごした大学時代に遡る。「将来は自分で何か店をしたいというのがあって、池袋にあるバーでアルバイトをしてたんです。シャツ着てネクタイ締めてシェイカー振ってるバーテンダーがカッコイイなっていう単純な理由(笑)。その後、上野にあるワインバーで働き始め、ソムリエの資格を取るために勉強してたんですけど、どうせならフランス行って生産現場を自分の目で見てみようと思ったんです」。1年間で100万円貯めて渡仏しようと決意。そして2012年、25歳のときにワーキングホリデーでフランスへ渡った。

 「9月から11月の収穫期はワイン生産者さんのところで住み込みで働かせてもらいました。そこで作ってたのがナチュラルワインだったんです。飲んだ瞬間、ワインの概念が変わるほどの衝撃があって。今まで勉強してきたワインと全然違うかったんです。果実味がしっかりしていて、飲み心地が優しい。するする飲める美味しさに驚きました」。収穫期が終わってからは、フランス各地のナチュラルワインの生産者を訪ねて回った。その後、西部の街・ナントのビストロで1年間勤務。「小さな店だったんですが、ワイン生産者さんたちがたくさん集まる店だったので、いろんなつながりができて。休みになると生産者さんのところにおじゃまして、ワインを飲ませてもらってました」。

 帰国後は、独立へ向けたスキルアップと開業資金を蓄えるため、東京都渋谷区のビストロでワインのセレクトを担当。その後、系列店のワインバーの立ち上げを任され、3年間店長を務めた。

 徳島へ移住したのは2018年。子どもがほしいと考えるようになったのをきっかけに「夜中心の生活を変えたいと思ったんです。夫婦で話し合って、酒屋さんなら経験も生かせるし昼の仕事にシフトできるということになりました」。子育てする環境を考え、妻・絵梨子さんの実家がある徳島で店を構えることに決めた。

 「最初は在庫をそんなに抱えず、小さく回していこうと思ってここに決めたんです。ネット販売にも力を入れたかったので事務所的なスペースとワインセラーにできる場所、2部屋あることが条件でした」。徳島市の不動産会社の紹介で、以前は野菜の保管庫と事務所だった約7坪の物件がぴたりとはまった。「開業にあたっては、徳島商工会議所でいろいろ相談に乗ってもらいました」と経理を担う絵梨子さん。資金は基本的にこれまでの貯蓄をあて、徳島市が起業者支援として実施している「徳島市創業促進事業補助金」も利用した。

写真を拡大 店の面積の3分の2を占めるワインセラー。

 内装のほとんどは夫妻のDIY。ペンキを塗ったり床材をはがしたり。ワインセラーには断熱材を張り、常時摂氏14度以下になるよう空調を整備した。昨年4月にオープンしてからはホームページやFacebookで店の情報を発信している。「最初からお客さんが来てくれるとか期待しすぎんようにしようって思ってたんです。ネット通販もあるし、しばらくは東京時代に培った人脈を頼るようなかたちになるかなと考えていて。なんか、ふんわりした感じでスタートしました。途中で、東京でおったときより集客を頑張らなあかん!って気づきましたね」。昨年12月からは角打ち営業を始めた(営業日の18時〜21時)。銘柄は日により異なるが、赤白2種類ずつが楽しめる(グラス1杯800円〜)。「まずは飲んでもらわないと伝わらない。今までワインを飲んだことがない人にも味わってもらいたいですね」。現在、取り引きの大半は東京の飲食店だが、今後はもっと徳島の人にナチュラルワインの美味しさ、奥深さを知ってほしいと意欲を燃やす。   

写真を拡大 フランス・ロワール地方でナチュラルワインを生産するセバスチャン デルヴューのワイン。

 

角打ちメニュー
・グラスワイン(800円~)
・ボトルワイン(3000円~)
・カンづめ各種(400~500円)

住所=徳島市仲之町1-21-5(アメニティ仲之町101)
営業時間=ワインショップ11:00~18:00、
角打ち18:00~LO21:00
定休日=木曜休、不定休あり

駐車場:なし
完全個室:なし    
多機能トイレ:なし
座敷席:なし    
Wi-Fi:なし
開店:2019年