チャットモンチーをはじめ徳島のバンドマンが通う楽器店「ギターハウスRaB」(徳島市両国本町)が20日、本店である黒崎楽器(徳島市通町)1階に移転した。オープン以来38年間、徳島のバンドシーンを支えてきた拠点は、軽音楽を取り巻く環境の変化に伴い、独立店舗としての営業を終えた。同店でアルバイト経験のあるチャットモンチーの福岡晃子さんは「移転してもバンドマンが安心できる場であり続ける」とエールを送る。
ネオンサインのある店舗に入ると、壁いっぱいにギターが並ぶ。ギターハウスRaBは、徳島の老舗楽器店「黒崎楽器」の軽音楽部門として、バンドブームだった1980年に徳島市両国本町でオープンした。当時は木造2階建ての建物で、1987年に現在のビルに建て替わった。徳島駅からもライブハウスからも近く、楽器の購入やメンテナンス、情報交換のために多くの若者が訪れた。
徳島のバンドマンなら知らない人はいないこの店。チャットモンチーのベーシスト・福岡晃子さんがデビュー前にアルバイトをしていたことでも知られ、福岡さんが当時書いたポップなども残っている。チャットモンチーの聖地としてファンが来店することも多かった。
「POLU」「THE NINJA」のギタリスト・蜂蜜金柑熊五郎さん(27)は、中学時代から足を運ぶ。「スタッフと仲良くなって入り浸るのが楽しみな場所。機材は店内で試してアドバイスをもらいながら自分に合うものを選べるし、メンテナンスもしてもらえる。ものを買うだけじゃなくてバンドマンが集まって話す情報交換の場でもあったので、思い出も思い入れもある。本店は幅広い楽器を扱っていて刺激を受けられそうだけど、これまでのようにワイワイできなくなったら寂しい」と話す。
一方で、ダンスユニットやアイドルの隆盛でバンド人口が減少。加えて、インターネットで楽器を購入する若者が増加するなど、軽音楽を取り巻く環境は厳しさを増している。黒崎楽器の黒崎雅夫社長は「近年の売り上げはピーク時の3分の1、10年前と比べても半減している。軽音楽の楽器店は全国的に同じような状況だ」と語る。
ピアノや管楽器を扱い、レッスン室もある本店に移ることで、同じフロアで楽器を選ぶことができるようになる。独立した店舗で営業を続けるよりも、スタッフが充実し、サービスも一層行き届くようになると考えた。
間口の狭い旧店舗では「初心者が入りにくい」「専門的すぎる」という声もあったことから、移転後は1階の通りに面したスペースを軽音楽コーナーにリニューアル。ギターやドラムなど取り扱う商品は移転前と変わらず、その奥にピアノ、管楽器コーナーを置く。
黒崎社長は「総合楽器店として、より利用しやすい魅力ある店にしていきたい」と話している。
【チャットモンチー・福岡晃子さんのコメント】
ギターハウスRaBでバイトしていたのは大学生の頃。
バンドというものの基本を全く知らずにチャットモンチーに加入し
「バンドしとるくせにほんなことも知らんのかいな!」
あの場所にRaBがなくなってしまったことの寂しさはあるけれど
新しいRaBにもこれからもたくさん遊びに行きます。
そしてまた運命の楽器に巡り逢いたいです。